| はじめに
第1部●自閉症児の理解と教育……三木 裕和
第1章 自閉症児と向きあう
1 学級編制
2 「アイシテネ」
3 ツヨシ君、絵を描く
4 「修学旅行に行きたい」
第2章 自閉症児をどう理解するか
1 自閉症という障害
2 運動障害がないという「幸福」
3 過敏性からくる不快・不安・恐怖
4 不安や恐怖から守られているという実感
5 愛すべき存在なのに
6 自閉症児との「共感」
7 体の中の不快感
8 怒りにとらわれる子どもたち
第3章 自閉症教育のあり方をめぐって
1 自閉症教育で大切にすべき視点
1●「君のことが好きだよ」というメッセージ
2●文化、科学の獲得
3●「特異な楽しみ方」は文化、科学を獲得する
入り口
4●第二者の形成、安心できる集団
2 TEACCHについて考える
1●TEACCHの一つの柱――「障害特性の尊重」
2●TEACCHのもう一つの柱――行動主義
3●学校教育が教育であり続けるために
第2部●自閉症を医療と教育心理学から理解する
第1章 自閉症と医療……小谷 裕実
1 医療における自閉症 106
1●小児科医、ハジメテ自閉症と出会う
2●医療における自閉症
3●診断の意味
4●エピソードから
5●診断が生かされるために
6●自閉症のこれから
7●病因を追い求めて
8●神経心理学的指標
2 診断の実際
1●診断基準
2●診断までの道のり
3●乳幼児健診
4●診断に迷った子どもたち
3 告知について
1●告知の実際――保護者に対して
2●告知の実際――本人に対して
4 アスペルガー症候群について
5 自閉症と合併症
1●てんかん
2●行動障害
3●AD/HD(注意欠陥多動性障害)
4●その他
6 自閉症の治療考
7 小児科医、イギリスに行く
1●自閉症学校にて
2●学校組織と教師の研修
3●イギリスのクリニックにて
第2章 自閉症と教育実践心理学……奥住 秀之
1 基礎知識編
1●自閉症を決める三つの行動
2●自閉症の多様性
3●自閉症の法的位置づけ
4●自閉症と学校教育
5●自閉症の脳障害
6●自閉症の心理学的原因論
7●「三つ組」障害以外によく見られる行動
2 かかわりの工夫編
1●伝達の工夫
2●状況を分かりやすくする工夫
3●他者の内面、自己の内面を説明する工夫
4●落ち着ける空間をつくる工夫
5●失敗させない環境をつくる工夫
3 私の出会った子どもたちから学んだこと
1●鉄道大好き、話し出したら止まらないAくん
2●心理テストの不安を乗り越えようとするBくん
3●勝ちたい気持ちを抑えられるかCくん
4 三木さんの実践から学んだこと
1●感覚過敏というつらさ
2●強い不安を乗り越えて
3●三木さんのTEACCHに対するコメント
4●私の気持ちをわかってくれる先生とともに
あとがき
|
はじめに
自閉症教育の本を書くことになりました。
世の中には、自閉症に関する研究書、実践記録がいっぱい出版されていて、その中には読み応えのあるものもこれまたいっぱいあって、この上さらにどんなものが必要なのかというご時勢です。
それを知りながら、なぜ、私たちは書くことになったのでしょうか。
第1章から第3章までを執筆する私(三木)は、長い間、重症心身障害児教育に関わってきた教員です。自閉症について研究したこともなければ、実践家としても自閉症専門というわけではありません。もちろん、障害児学校に勤めていたので、自閉症児に出会いもすれば、一緒に遊びもしました。でも、それはあくまで「同じ学校の子ども」という程度のおつきあいでしかありませんでした。
ところが、ある年の春、幸運な巡り合わせから、自閉症児を担任することになったのです。重症児教育にとっぷり浸かって学校生活を送ってきた者に、自閉症の担任経験はとても新鮮でした。子どもたちの立ち居振る舞いは一つひとつが驚きでしたし、自閉症教育も、えっと思うような不思議さに満ちていました。
この経験は、障害や教育というものを、そのおおもとから考え直すきっかけとなり、身近な人にレポート報告したり、おしゃべりしたりしているうちに、面白がってくれる人も現れるようになり、「これをちゃんとまとめてみたい」という気持ちになってしまったのです。
そういうわけで、三木の書くものは研究という格式の高いものではなく、気楽な教育エッセイのつもりで書きはじめました。しかし、それでは読者にとって、あまりにも得るものが少なすぎはしないかと不安になり、お二人の専門家に応援をお願いしました。
お二人は、医学(小谷)と教育心理学(奥住)の研究者で、ともに私よりずいぶんお若いのですが、その道では広く知られた、ファンの多い有名人です。専門的力量はもちろん確かですが、なによりも子どもを見つめるセンスに優れたものがあり、これからお読みになる文章の端々にそれを感じられることでしょう。
三木の奔放な教育談義を読んでいただいた後、お二人がご自身の考えを自由に、のびのびと語り始めることになります。三人の考えは調和的なハーモニーを奏でることもあれば、不協和音を響かせることもあろうと思います。しかし、その不調和なところにこそ、それぞれが一番奏でたい音色があるのだとご理解ください。
自閉症という障害をもって生きる子どもたち。
君たちのことを少しでもよく分かりたいと願う人は、この世に多く存在します。本書をつくった私たちも、その中の一員でありたいと願います。
著者を代表して 三木裕和
◆◆◆関連記事紹介◆◆◆
・教育医事新聞 2007年11月25日版
|