| 1 まさか、わが子が障害児?
2 子育てを仲間のなかで
3 どこの地域にも専門施設を
4 専門施設と統合保育
5 専門施設から保育園へ
6 統合保育を実りあるものに
7 開放的な空間で育てる
8 ゆっくり外食を楽しむ
9 生活の主人公になる
10 子どもの出番をつくる
11 毎日散歩に出かける
12 自然の中で育てる
13 園庭で自由に遊ぶ
14 リズム遊びを楽しむ
15 絵本を楽しむ
16 おはなし大好き
17 “ごっこあそび”を楽しむ
18 本物体験をする
19 作って食べる
20 作って遊ぶ
21 お昼寝をする
22 自立のための共同作業
23 おしゃれを楽しむ
24 五歳児保育
25 プロに習うスイミング
26 学校を選ぶ
27 行事を楽しむ
28 障害児を育てる
29 民主的な保育者集団をつくる
30 「発達相談員」の仕事
補1 絵本と子育て
補2 偏食への取り組み
補3 自閉症児も仲間のなかで育つ
補4 きょうだいを育てる
● 資料/
ひまわり園の一週間
ひまわり園の空間と活動内容
一日にそった保育者の役割担当・分担
障害児保育30話+
増補4テーマ
1 絵本と子育て
……自閉症児も読みきかせを楽しむようになる
2 偏食の取り組み
……食べる─食べないを決めるのは自分
3 自閉症児も仲間のなかで育つ
……すべて能力は連関して発達する
4 きょうだいを育てる
……家庭でできる子育ての「智恵とコツ」 |
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「増補改訂版」発行にあたって
初版から八年、本書が障害児保育の入門書として、おもに障害幼児の子育て真っ最中の親や通園事業で障害児に取り組む保育者、そして、発達相談員や保健師など子育て支援にかかわる専門職の方々によく読まれ、「障害があっても、こんなにも豊かな育ちが可能なのだという希望がもてた」との感想をいただいたことをうれしく思っている。
近年の自閉症の研究の進歩と自閉症者自身の手記によって、その認知特性と内面世界が明らかになってきて、その支援として「ティーチプログラム」が日本でも普及してきた。その理念は九つあって、地域で生涯にわたる支援をめざしている。
実践的には本人自身が見通しをもって主体的に生活できるようにと環境やスケジュールを構造化し、自閉症者の優れている視覚的な認知能力をいかして、コミュニケーションの手段として視覚的なシンボルやサイン、写真やイラストを使用するというものである。
障害児の立場にたってわかりやすく、意味がわかって主体的、能動的に動けるようにという構造化のアイディアは、ひまわり園の活動と結びつけた園の保育空間とデイリープログラムとよく似ているといえよう。(巻末資料「ひまわり園の一週間」「ひまわり園の空間と活動内容」参照)
この構造化された環境のなかでの自由度の高い保育は、障害種別によらず、すべての子どもに豊かな育ちを保障するものであることが確かめられてきた。それは感覚過敏などをもつ自閉症児も例外でない。ひまわり園はこれまで生活年齢を軸として三つのグループに分けて活動をしてきたが、発達や障害が多様な子どもがいる集団活動のなかから、予想を超えて仲間との関係を築き世界を広げていくこともわかってきた。衝立で特別に視線をさえぎらなくても、生活文化にくるまれた「あたりまえの」「ふつうの」保育のなかで、どの子もゆっくりとではあるが、発達していくということを実証した八年間であった。
初版後、和歌山県では障害乳幼児の受け皿である児童デイサービス事業は、支援費制度の活用によって飛躍的に伸び、公立や私立、地域としては紀北から紀南へとひまわり園やこじか園などの三か所の児童福祉施設とあわせて、実に一六か所にもなった。
乳幼児健診で気になる子どもたちへの子育て支援として、市町村の運営する「親子教室」があるが、そこでの経過観察から、さらに週一回から二回の「親子療育」を経て、ひまわり園のような「単独療育」へ、そして保育所や幼稚園に通いつつ主役になれる場としての「並行療育」などの機能もあわせもつ施設も多くなった。
また卒園して学童になった子どもたちに、豊かな放課後や長期の休みを保障するための学童保育も多数立ち上がり、そして、中学生や高校生のためのタイムケア事業も実施されるようになった。
初版で、受け皿のないところでの発達相談の苦しさを述べ、どこの地域にも専門施設をと訴えたが、それが実を結び、筆者が出向いていた地域にすべて受け皿ができ、発達相談は本当に意義あるものになった。通園につながった親と子が、それぞれに仲間を得て輝いているのを見て、保健師とともにこの仕事の喜びをかみしめている。
これらの通園は横につながり、和歌山障害児保育運動連絡会を結成して、さまざまな問題解決のための運動と職員の親睦、研修に取り組んできた。そして二〇〇六年には全国発達支援通園事業連絡協議会の全国大会を開催するまでに力をつけてきた。
しかし二〇〇六年秋、障害者自立支援法の本格実施により、障害乳幼児の療育の中核を担ってきた通園施設が、措置制度から利用契約制度にかわり、利用者負担がこれまでの「応能負担」が「応益負担」という仕組みに変更された。「まさか、わが子が障害児?」とその受容に苦しむ親に障害の判定を必要とし、さらに給食費など定率の費用負担を強いるなど、施設利用のハードルを高くするものである。
ひまわり園、こじか園をはじめ通園事業も逆風にさらされているが、このようななかにあっても、これまでにつちかってきた保育は揺るぎないものがある。
次々できていった通園施設では、全体としての療育のあり方や行事、デイリープログラム、保育内容・方法などについて、ひまわり園をモデルとして実践をすすめてきた。ひまわり園はその意味で、羅針盤の役割を果たしてきたといえよう。
ただ物理的な保育空間については、福祉センターの二階の一角であって園庭がない、保育室が一部屋など、その貧弱さは否めないが、「子どもにわかりやすく」をモットーに活動と結びつけて家具や生活用具を配置するなど構造化し、むしろその悪条件を逆手にとって地域に出て行くなど、どこの通園施設も子どもたちの豊かな育ちを保障している。
個別の教育が強調される今日、初版で随所にみられた仲間のなかで育つ子どもの姿を価値あるものとして多くの方に知ってもらいたいと思い、初版の在庫もなくなったこともあって前回ふれることができなかったテーマについて四話をつけ加え、「増補改訂版」として出版する運びとなった。
最初の三話は自閉症児の育つ姿に焦点をあてたものである。
絵本に関していえば「赤ちゃん絵本」といわれる分野が「ブックスタート」運動にも後おしされて出版がさかんである。言葉の意味がわからなくてもリズミカルなオノマトペの文とシンプルな絵、繰り返しのあるストーリー、段ボールの素材でめくりやすくしたり、しかけがあったりの絵本は、たいていの子どもが興味をもつ。絵本や紙芝居、ぺープサートを指をくわえてじっと見ていた自閉症のともくんが、五歳になってものすごいスピードで絵を描きだした。それは、何回も何回も繰り返し園や家庭で読みきかせてもらった、お気に入りの絵本の絵であった。このように「絵本と子育て」には紹介したい親子のほほえましいエピソードは無数にあるが、紙面の関係でつばさくんに登場してもらった。
「きょうだいを育てる」という章は、ひまわり園やこじか園で保護者教育の一環として講義しているものである。まだ「まさか、わが子が障害児?」と葛藤しておられる時期の親に、さらにきょうだいのことで心配させるなど酷ではないか、と考えたが、結果は一人っ子も含めて杞憂であった。障害児を育てる親が知っておかねばならないこととして気づきを与えられた、と前向きな感想であった。写真(一二六ページ)はマーくんの妹さんに登場してもらったが、きょうだいは行事に参加することによって、同じ立場のものがこんなにたくさんいるのだとわかり安心するのであろう。障害児施設は、親と障害児だけではなく、きょうだいにも仲間を保障する。通園では家族支援、とりわけきょうだいのことを大切に思い、行事などを組み立てている。
最後に、初版と若干さしかえた写真や補章の写真掲載を快く承諾してくださったひまわり園やこじか園、通園みらいの父母の方および保育者のみなさんに、そしていろいろと助言などご尽力いただいたひまわり園の舩木園長に厚くお礼を申し上げたい。
なかなか筆の進まない筆者を励まし続けてくださった、クリエイツかもがわの田島英二さんのおかげで出版にこぎつけることができました。記して感謝いたします。
二〇〇八年五月
両角正子
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