土割の刻(つちわれのとき)
 ―田中昌人の研究を引き継ぐ


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土割の刻

編著 田中昌人先生を偲ぶ教え子のつどい実行委員会
定価2520円(本体価格2400円)
ISBN978-4-902244-77-9 C0037

●田中昌人の研究を引き継ぎ、創造的に発展させようとするメッセージ!
 発達保障理論、生涯発達心理学、霊長類学、障害者教育学、発達診断学、教育指導、
 教育権利論、大学教育など

●最後の講演を収録

●もくじ  

発刊にあたって

第1部 豊かな発達保障論の構築をめざして

 発達連関の進化を問う
  ――「新胎教」から胎児期にはじまる比較発達研究へ
      竹下 秀子
 「新しい出発を!」の呼びかけにどうこたえるか
      服部 敬子

第2部 研究の継承と発展

  個人の発達の系における「階層―段階理論」の提起と
 その魅力  荒木 穗積
 集団の発展の系の解明を  中村 隆一
 田中昌人教授
  ――平和・安全・発達保障の学問への志
     田中 真介
 田中昌人先生を偲ぶ  劉  郷英
 田中先生の指導を受けて  荒木美知子
 「可逆操作の高次化による階層―段階理論」への入り方
  ――私の場合とこれからの入り方  加藤 聡一
 「〜デハナイ〜ダ」に魅せられて  長崎 純子
 龍谷大学大学院時代に学んだ発達保障論  山本弥栄子
 研究を続けていく大切さ
  ――朝がこない夜はない  山本 陽子

第3部 保育・教育・療育実践の現場から

 別れに思う  古川 和子
 学力回復と青年期の発達を模索して  柏木ひとみ
 大津市における新しい発達保障システムの
 構築に、先生の遺志を引き継いで  松原 巨子
 田中昌人先生への感謝のことば  脇中起余子
 「大津方式」の現場から  西原 睦子
 施設職員として、母として  高橋真保子
 障害あるすべての子どもたちの豊かな人格発達を
 めざす教育を!  羽田千恵子

第4部 あの頃のBコース

  「大学紛争」と教育学研究と健康と  梅田  修
 「Bコース」を引きついで  田中 耕治
 あの頃のこと  伊藤 隆司
 共同研究草創期 ――一九八四〜一九八七  築山  崇
 教育課程講座出身者としての思い出  鋒山 泰弘
 「ライフワーク」に導かれて  松下 佳代
 最終講議のことなど
  ――最後の、そして不肖の助手として  山崎 雄介

第5部 思い出の花束

  田中先生からいただいたご縁  高垣忠一郎
 大津・長等の夜更けに  広川 律子
 師との「独り占め」珍問答  近藤 郁夫
 田中昌人先生との出会い  尾関 夢子
 「周辺」から問い直す  渡邉 保博
 続く対話  佐々木美智子
 発達保障の権利論  渡部 昭男
 全国障害者問題研究会全国大会、
 国連・障害者権利条約、『要求で育ちあう子ら』
  ――田中昌人先生に最後にお会いした時のこと
    玉村公二彦
 矛盾に満ち、未完成であった一青年より  木原成一郎
 田中先生から学んだこと  西川由紀子
 真理・真実を学ぶ――田中昌人先生を偲んで
    福田 真人
 美術教育分野での先生のご足跡  梅澤 啓一
 田中昌人先生の想い出  河原 紀子
 未来に向けて田中先生を偲ぶ  藤野 友紀
 わすれられないおくりもの
  ―こころに遺ることば  上原 之映
 遺志を受け継ぐ  窪島  務

資料 田中昌人先生を偲ぶ教え子のつどい
 次第/開催の趣旨とごあいさつ/田中杉恵先生からの
 メッセージ/結びのことば
 第1回関西圏大学教職員「教育・研究フォーラム」講演録
 (巻末)
 ●田中昌人業績目録(巻末)

 
 発刊にあたって
 
 本書は、京都大学、龍谷大学時代の教え子が集まって催した「田中昌人先生を偲ぶ教え子のつどい」(二〇〇六年一一月二三日)の記念誌がもとになっています。当日は、全国各地から九〇名余の参加者があり、田中昌人先生の在りし日を偲びつつ、田中先生が残された業績をいかに引き継ぎ、発展させるかが語り合われました。
 田中先生の研究領域は幅広く、発達保障理論をはじめ生涯発達心理学、霊長類学、障害者教育学、発達診断学、教育指導、教育権理論、大学教育などです。当日の関係者もそれぞれの分野を代表した多士済々の方々でした。
「つどい」には、田中杉恵先生もメッセージを寄せてくださいました。ご家族からは健康状態がよければ「つどい」に参加したいとの連絡もいただいていましたが、体調がすぐれず参加いただけませんでした。その後、「つどい」のようすを記録したDVDと記念誌を送らせていただきました。
 そんなおり、昌人先生につづいて杉恵先生が二〇〇六年一二月三〇日に亡くなられたとの訃報がご家族より届きました。この一年余の間にお二人の先生を喪ったことは、まことに残念でなりません。お元気な間に、お二人から学んでおきたかったこと、教えていただきたかったことがたくさんあったことを今更ながら悔やんでいます。
 こころより昌人先生、杉恵先生のご冥福をお祈りいたします。
 
 田中昌人先生、杉恵先生の教えを受けた人は、非常勤講師や講座、講演などを含めると何人になるかわかりません。これら多くのみなさんとともにお二人の業績に学び、その研究成果を次の時代へと継承・発展させていくことが期待されています。
 昌人先生が亡くなられてから一年余が経ちますが、この間、心理科学研究会二〇〇六年春の研究集会、人間発達研究所第二一回研究集会、日本応用心理学会第七三回大会などで追悼のシンポジウムが企画されてきました。『人間発達研究通信』では三回にわたって追悼の特集が組まれました。また『障害者教育科学』(科学的障害者教育研究会発行)第五四号では「京都の教育と田中昌人の足跡」が特集されました。その他、関係の深かった全国障害者問題研究会や人間発達研究所、大学評価学会などでは機関誌やホームページで追悼文を発表しています。
 
 さて、先の「つどい」では記念誌『土割の刻』を四〇〇部発行しました。当日の参加者および希望される「教え子」のみなさんに配布させていただきました。また、「つどい」実行委員会から関係者のみなさんにも送らせていただきました。その後も購入の希望が事務局や出版社によせられましたが、ご希望いただいたみなさんに配布できない事態となりました。記念誌はもともと「教え子」のみなさんに呼びかけ原稿をよせていただき、それを編集したものです。昨年一二月一六日の「つどい」実行委員会(最終回)の席上で、寄稿者の了解をいただいた上で記念誌を再編集し、出版させていただくことを話し合いました。その後の作業は実行委員会事務局にまかされることになりました。このたびクリエイツかもがわの熱意とご支援により本書を発行するはこびとなりました。本書への転載を許可いただいた「教え子」のみなさんにこの場をかりてお礼を申し上げます。あわせて、記念誌写真、題字の本書への使用を許可してくださった関係者のみなさんに感謝いたします。
 
 本書の編集にあたって、資料として「つどい」の式次第、あいさつおよび当日配布させていただいた第一回関西圏大学教職員「教育・研究フォーラム」の講演記録を掲載させていただきました。後者は、田中昌人先生の最後の講演です。講演は亡くなられるちょうど一か月前の一〇月二二日(土)に行われました。大階層概念にふれて「創出可逆操作の階層」と「今年ついに命名するに至っています」と熱く語っておられます。新しい「創出」の命名によって「人間発達の研究の面ではかろうじて間に合ったという感じがしております。人間発達の研究の面で間に合わないかもしれないなとおもっていた点が解決し、次の研究・実践を創出していく契機をつくりだした」と述べておられます。最後の最後まで意欲をもって研究生活に取り組んでおられたことがよくうかがえます。
 田中先生は、最期まで自分にあたえられた仕事に強靱な精神力を発揮して取り組まれました。とりわけ発達保障の理論の構築には、病床に原稿を持ち込んでまで全身全霊を傾けられました。「病院に入院すれば、二四時間の仕事場ができると原稿を持ち込んで仕事をされた」というエピソードが懐かしく思い出されます。
 
 昨年一二月一三日、第六一回国連総会で「障害者権利条約」が採択されました。一九八九年の「子どもの権利条約」以来の人権条約です。二一世紀に入って最初の人権条約でもあります。田中先生がお元気であればどのような感想を聞かせてくださったことでしょう。
 新しい世紀を名実ともに発達保障の世紀とするような本格的な取り組みが求められています。そのような道を模索し、拡げていくことが田中先生の残してくださった研究を継承し、創造的に発展させる道につながっているといってよいでしょう。

 二〇〇七年一月二二日 田中昌人先生の七五回目の誕生日に

「田中昌人先生を偲ぶ教え子のつどい」実行委員会事務局

 

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