発達障害と向きあう
 ―子どもたちのねがいに寄り添う教育実践


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発達障害と向きあう

編著者 青木道忠・越野和之・大阪教育文化センター
執筆者 宮本郷子・大島悦子・堤由香里
定価1890円(本体価格1800円)
ISBN978-4-902244-71-7 C0037

●アスペルガー障害、高機能自閉症、LD、ADHDなど、発達障害のある子どものねがいに
 迫る教育!

●個別の配慮・対応と集団の中で発達する子ども観が貫かれ、どの子にも安心と自由が保障される
 教育がここに!

【特別支援教育】発達障害へのすぐれた取り組み 小・中学校の教育実践

 1 通常学級の1人ひとりの子どもを大切に受けとめ、育てていく学級づくり
 2 自閉症を前向きにとらえ「自分を見つめ、自分をわからせる」授業
 3 個別の配慮・対応と集団の中で「自分を見つめる目を育む」

●もくじ  

 はじめに 青木道忠
通常学級でていねいなかかわりを求めている子どもたち
   宮本郷子
 1 すべての子どもたちに豊かな発達を
 2 入学当時の翔太の様子と対応
 3 大切にしてきたこと
 4 翔太の変化・発達
 5 翔太の課題
 6 翔太の発達を支えたこと
 7 その後の翔太と学級集団

 “わたしってへん?”私は自閉症
   ――「自分を見つめる、自分をわかる」授業
   大島悦子
 1 すみれ学級に入学
 2 本当の出会い
 3 すみれ学級での取り組みで成長(三年生)
 4 生活環境の変化の中で(四年生)
 5 すみれ学級のリーダーへ
 6 友だちの思いがわかる
 7 再び、学校生活の変化の中で(五年生)
 8 えい子のその後
 9 すみれ学級があってよかった

ぼく、また誤解しちゃったのかな
 ――なかまの中で自分を見つめる目を育む
   堤由香里
 1 ぼくらは五組、二一人楽しい仲間
 2 「おれを苦しめる悪いヤツめ」(一年生)
 3 頻尿とパニック(二年生一学期)
 4 信頼関係の中でパニックが減っていく(二年生後半)
 5 自分を見つめ、友だちを見つめる(三年生)
 6 自分へのねがいと自分を見つめる目の育ち
 7 クラスのなかまとの育ち合い
 8 縦割り集団の中での育ち
 9 行事の中で育つ
 10 教科の授業「わかるって楽しい !!」
    ――友だちとともに学ぶ
 
発達障害のある子どものねがいに迫る教育実践
   越野和之
 1 特別支援教育をめぐる動向への危惧と
   教育実践研究の課題――本書の経過と意図
 2 三つの教育実践記録によせて
 3 発達障害をもちながら生きる子どもたちの
   ねがいに迫るために

 

◆◆◆関連記事掲載◆◆◆
みんなのねがい 2007年4月号
日本教育新聞 2007年6月25日


はじめに

 本書は、小学校の通常学級および障害児学級、そして中学校の障害児学級などにおけるLD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)、高機能自閉症やアスペルガー障害などの子どもたちに焦点をあてた教育実践の書です。それも、単に個人の実践を寄せ集めたものではなく、研究機関である大阪教育文化センターにおける研究活動の中から生まれたものです。すなわち教育現場の実践と研究活動とが結合したなかでつくられたものである点に本書の大きな特徴のひとつがあるといえましょう。
 ところで、LD(学習障害)や注意欠陥多動性障害、高機能自閉症、さらにはアスペルガー障害などをめぐっては、一般にはまだまだ十分知られていないのではないでしょうか。そこから誤解が生まれることも少なくありません。たとえば、これらの障害をさして「軽度」発達障害と呼ばれることがありますが、そこから生じる「軽い障害だ」という受けとめなどはその典型といえましょう。
 誤解のないように整理しておきますと、軽度とは「知的障害はない」ということ以上の意味はありません。
 しかし、知的障害がないことによって理解されがたいところが多々生じてきて、そのことによってかえってかかえる困難が大きくなりがちなのです。
 たとえば、LDのように情報の取り入れ方や処理の仕方が上手ではない子どもたちは、「聞く・話す・読む・書く・計算するなど」に困難を生じ、学習面で達成感を得にくくなりがちです。
 また、ADHDの子どもたちは、大脳の行動抑制の働きが不十分なために多動性や衝動性、不注意性が強く表れがちです。そうすると日常的に起こる事態・経験を通して学習したことを、物事を解決する力として積み上げていくことがむずかしくなり、同じ失敗を繰り返して叱られることが多くなってしまいます。
 さらに高機能自閉症やアスペルガー障害のように、対人関係がうまく築けなかったり、柔軟に状況に対応することがむずかしかったりする子どもたちは、ストレスをためてパニックになったり、いじめの対象になったりもしがちです。そのうえ、これらの障害は知的障害がないために「なぜそうなるのか、なぜそんなことをしてしまうのか」が理解されがたく、「がんばりのきかない子」「不真面目な子」「自分勝手な子」「しつけの悪い子」などと注意や叱責、非難の対象となりがちなのです。そのような中で、子どもたちは傷つき、また傷つきやすくなっていきます。そして、物事と向かい合ったときには「また失敗するのではないか」「また叱られるのではないか」と失敗経験の蓄積による苦手意識・不安・抵抗感などを身につけていきます。
 さらには「自分をわかってくれる人はいない」「自分は愛されていない」という孤立感をもち、やがては「どうせ俺なんか」と自己評価を低めていきます。そうすると、次第に、消極的になり、力を発揮できなくなって、最後まで自分を励まし、葛藤や苦難を乗り越えていくことがむずかしくなっていくのです。場合によっては不登校のような形で学校生活への不適応が拡大することも少なくありません。
 本書には、こうした子どもたちの否定的な姿に惑わされず、その奥にある願いや葛藤、つらさやイライラを受けとめながら、それを前向きに乗り越えていくことを支援する教師と保護者の共同した実践が収録されています。

(本書「はじめに」より抜粋)

 二〇〇七年一月六日

編者を代表して   
青木道忠

 

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