大震災15年と復興の備え


注文する
大震災15 年と復興の備え

©塩崎賢明・西川榮一・出口俊一
兵庫県震災復興研究センター●編
定価 1260円(本体価格1200円)
ISBN978-4-86342-045-8 C0036

●“復興災害”を繰り返さない─生活・経済基盤、人とのつながりを回復させる「人間復興」を。
阪神・淡路大震災15年の復興過程を検証し、今後の備えを提言。

●もくじ ●内容紹介

はしがき   塩崎 賢明

1 総論
 01 大震災の一五年  塩崎 賢明
 02 開発・成長型復興政策と貧困化  池田  清
 コラム● 震災復興と政治  出口 俊一

2 「阪神・淡路復興計画」事業費の検証
   ― 16・3兆円は何に使われたのか
     増田  紘
     塩崎 賢明
 コラム● 兵庫県西・北部豪雨被害  田結庄良昭

3 いまなお復興災害
   ―「創造的復興」のもたらしたもの
 01 神戸空港の破綻  高田 富三
 02 新長田駅南地区再開発  塩崎 賢明
 03 震災障害者  岩崎 信彦
 04 震災アスベスト被害の潜む危険  森  裕之
 05 災害弱者のその後  金持 伸子
 コラム●緊急リポート ハイチ大地震(一月)
     村井 雅清

4 復旧・復興への提言
 01 避難所  黒田 達雄
 02 外国人・災害弱者への支援  金持 伸子
 03 公費解体と応急修理  黒田 達雄
 04 災害廃棄物  西川 榮一
 05 企業の事業継続・営業再建支援  紅谷 昇平
 06 災害ボランティア  村井 雅清
 07 応急仮設住宅  黒田 達雄
 08 仮設市街地の構想  濱田甚三郎
 09 復興公営住宅の供給・管理  塩崎 賢明
 10 マンション再建  竹山 清明
 11 コミュニティ保全の復興まちづくり制度
    塩崎 賢明
 12 中山間地域からの持続的復興  澤田 雅浩
 13 自治体における被災者支援体制  谷口  寛
 14 「復興基金」  出口 俊一
 15 義援金  出口 俊一
 16 被害認定と支援策の見直し  津久井 進
 17 災害救助法  永井 幸寿
 18 被災者生活再建支援法 災害弔慰金法  出口 俊一
 19 災害復興法制  津久井 進
 コラム●被災マンション・15年の教訓  若原キヌコ

あとがき  西川 榮一


◆◆◆関連記事紹介◆◆◆

神戸新聞ひょうご版 2010年4月3日
朝日新聞  神戸、丹波篠山版 2010年4月5日
毎日新聞 兵庫版 2010年4月4日
しんぶん赤旗 2010年7月18日

はしがき

 二〇一〇年はまさしく、阪神・淡路大震災から一五年の節目の年であるが、自然は私たちにその感慨にふけることを許さないようだ。この一月ハイチで巨大地震が発生し、犠牲者は中国・四川大地震を上回る。さらにチリ大地震の津波は五〇年ぶりに日本にも押し寄せた。
 本書のねらいは二つである。ひとつは一五年を経過した阪神・淡路大震災の復興過程から何を学ぶのかということであり、いまひとつは、それを踏まえて今後の大災害の復興にどう立ち向かうのかということである。
 大震災から学ぶべき点について、私たちはこれまでに『大震災100の教訓』『大震災10年と災害列島』という二冊の本を出版した。その趣旨は、外見上華やかに見える復興の裏で、被災者・被災地は多くの問題を抱えており、その現状を正確にとらえ、被災者の生活・生業再建のために抜本的な対策を講じる必要があるということであった。しかし、この一五年間に被災者の生活再建に直接つながる施策として実現したものは、被災者生活再建支援法とその改正くらいであって、なお取り上げられていない多くの問題が存在する。
 災害の被害を最小限にとどめる「減災」を達成するには、事前の予防、直後の緊急対応が重要であることは言うまでもないが、災害後の復興過程においても甚大な被害が発生することが一五年間に明らかになってきた。私たちはこれを「復興災害」と呼び、その実態をできる限り、拾い上げてきた。復興災害は、事前予防や緊急対応と異なり、政策的・行政的な人災という面が強い。
 事前予防に多くのエネルギーを割いて対策を講じておくことは重要であるが、自然はそれを上回る力で襲ってくることがあるし、緊急対応に最大限の力を注いでも時間が限られ命が救えない場合がある。その意味で、これらには不可抗力的な側面が残る。しかし、復興は、災害が去った後に被災者の窮状を救うという課題であり、まったく人間社会の問題であり、まともな対応がなされるならば、救済はできるし、復興災害は防げるはずである。しかし、阪神・淡路大震災の復興災害を見れば、復興施策は決して十分ではなかったといわざるを得ない。復興戦略の根本である復興事業の資金配分について、今ようやく詳細なデータが明らかになった。被害額の一・六倍に及ぶ復興の資金はどこに投じられたのか。本書の分析で被災地の復興や被災者の救済に結びつかない多くの事業に「復興」の名が冠せられていた実態が解明される。これまでの復興検証では「できたことと、できなかったこと」があるといわれてきたが、むしろ、「やったこと」と「やらなかったこと」がある、というべきであろう。
 また、震災障害者やアスベスト被害の問題など、ようやく光が当てられるようになった問題もある。本書では、改めて一五年を経過した復興災害の実相に迫ろうとした。
 次々と起こる国内外の災害に対して、阪神・淡路大震災の教訓がしばしば語られるが、復興災害を防ぎ、被災者を救済するための復興の準備はまったくといってよいほどなされていない。数百キロにわたる沿岸域の大地震・津波被害ではどのように復興するのか。二〇一〇年一月に発生したハイチの地震では首都が壊滅したが、日本での首都直下や大阪直下地震における復興の備えはできているのか。ハイチのおかれている諸条件は日本の現状と異なるからと、対岸の火事のごとく見ている場合ではないであろう。
 災害が起こってから、これまでと同じことを繰り返す愚は避けなければならない。復興災害を防ぎ、被災者が立ち上がるための「復興の備え」はまさに一刻の猶予もなく急を要する。本書がその一助となることを願うものである。

二〇一〇年三月一七日

塩崎 賢明

注文する

戻る

TOPページへ戻る