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介護者の孤独を防ぎ、支える社会の仕組みづくりこそが
“事件”をなくす道
認知症の人と家族の会 代表理事 高見国生
越える― 乗り越えるほど自分が強くなる ―
30〜40代のメッセージ
「お母さんごめんね。ありがとう」
愛知県・女性・34歳
「殺すか、死ぬかだ」まで、ありったけを日記に
埼玉県・女性・38歳
耐えてばかりいないで動いてみてください
新潟県・女性・44歳
ダメと思ったら、一度介護から逃げてください
大阪府・女性・46歳
私に覚悟ができたら母の状態も落ち着いてきました
静岡県・女性・47歳
実際にはできないとわかっているから言葉に出てしまう
岐阜県・女性・47歳
正しいことを言われても何の役にも立ちませんよね
大阪府・女性・47歳
介護後の人生「何でもできる!」という気がしませんか?
東京都・女性・49歳
吐きだす― 言葉に出せばきっと楽になる ―
50代のメッセージ
頭でわかっていても義母の奇行は受け入れづらく……
奈良県・女性・51歳
苦しみを言葉に出せばきっと楽になります
和歌山県・女性・51歳
岸壁からダイブしようとした時「イヤダ!」と言った母
神奈川県・女性・52歳
助けを求めたやり方が最善でした
神奈川県・女性・54歳
私の誘いを「オラ、死ぬのはヤンダヨ」と
キッパリ拒絶した姑 宮城県・女性・55歳
入水準備を整えたその時に……
京都府・女性・56歳
子どもやわかり合える友だちが心の支え
愛知県・女性・56歳
私のストレス解消法 千葉県・女性・57歳
苦しい思いや悲しい思いをするから人にやさしくなれる
大分県・女性・57歳
夫はその時「おれヤダ……」 埼玉県・女性・59歳
否定しないことを第一に、孤独にならない、
絶望的にならない 静岡県・女性・61歳
殺さなくて、殺せなくてよかった、とつくづく
思っています 女性・59歳
きっと人生の大きな宝物となって返ってくる
三重県・女性・59歳
委ねる― 自分が壊れてしまう前に ―
60代のメッセージ
自分が壊れてしまう前に施設にゆだねてください
埼玉県・女性・60歳
幼子のようなきれいな姑の笑顔に助けられ
大分県・女性・60歳
とどまったのはその時たまたま代車だったから
埼玉県・女性・61歳
「もう介護できない」と声に出す勇気が必要
宮崎県・女性・61歳
母はとびきりの笑顔で「生きていたい」と
神奈川県・女性・63歳
毎日殺したいと思い続けていたが、自殺する勇気が
なかった 長野県・女性・64歳
きっと穏やかな日が来る 京都府・女性・65歳
「人間は生きていることに値打ちがある」という
言葉が励みに 静岡県・女性・65歳
行き詰まったら昨日と同じことをやりましょう
和歌山県・女性・65歳
もう少しもう少しと自分を励まして
埼玉県・女性・65歳
もっと早くに病気と理解していたら……
埼玉県・女性・66歳
「孫が殺人犯の母をもったら一生かわいそうや」と
母に諭され 奈良県・女性・67歳
反対車線のトラックに突入する誘惑に何度もかられ
神奈川県・男性・67歳
介護者にとっては抑えきれない感情
東京都・男性・67歳
「二人で死んでしまいましょうか」と言ったら
「ウン」と簡単に…… 神奈川県・女性・69歳
夫は「わしは死なん。自殺者も殺人犯も出しては
いけない」と 香川県・女性・69歳
変わる― 何度も涙しながら自分を変える ―
70代以上のメッセージ
私だけの秘密の手帖に思いをすべて書きなぐります
愛知県・女性・70歳
あなたは今、究極の人助けをしているのです
山形県・女性・73歳
何か環境の転換はいかがでしょう
兵庫県・女性・74歳
「一生懸命にならず開き直りなさい」が
魔法の言葉だった 福岡県・女性・74歳
認知症が介護者を虐待するのです
大阪府・女性・75歳
つらいのは決して自分一人じゃない
新潟県・男性・75歳
無意識に姑の首に両手を当てていました
山形県・女性・75歳
一人でがんばらないで、困ったら相談を
広島県・女性・76歳
夫に「おかあちゃん」と言われて我に返った
和歌山県・女性・77歳
「これは病気なのだ。本人の尊厳を守るのは
私だけだ」と自分を変えて 神奈川県・女性・78歳
包丁を取りに行ったことが少なくとも三回はある
埼玉県・男性・78歳
前の夫は死んで今の夫は別の人、私は二度目の
結婚……と考えて 静岡県・女性・79歳
妻を殺して自分も死にたいと思った地獄の時期
滋賀県・男性・79歳
疲れる前に、なるべく早いうちから施設などの
手続きを 岩手県・女性・80歳
私の確信「必ずのがれる道が開かれる」
福岡県・男性・82歳
「家族の会」の切なる願いが、一人でも多くの人に
届くように|
認知症の人と家族の会 理事・人権擁護専門委員長
田部井康夫
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介護者の孤独を防ぎ、支える社会の
仕組みづくりこそが“事件”をなくす道
社団法人認知症の人と家族の会 代表理事 高見国生
介護に追いつめられての、介護殺人や介護心中が増えています。
この本は、一度は相手を殺そうとした介護家族が、なぜ思いとどまれたのかを語り、いま極限の状態にある人たちに「苦しくても死なないで!」と呼びかける渾身のメッセージ集です。ぜひ受け止めていただきたい。
一九九八年には二四件、九九年には二九件だった介護殺人は、二〇〇〇年に三九件となり、その後は多少増減しながらも徐々に増え、二〇〇七年には四二件となっています。一〇年間の合計は三五〇件にもなります。(加藤悦子著、「介護殺人」、クレス出版)。
近年は、相手は誰でもよかったなどと言って見ず知らずの人を殺める事件が頻発し社会不安を募らせていますが、介護殺人(心中)はそのような行きずりの殺人ではありません。長年連れ添った配偶者や自分を育ててくれた親を、長年の介護の末に疲れきって殺してしまうというものです。もともとは愛情や責任感をもって介護にあたっていたはずなのに、いつしか、死んでしまいたい、相手を殺してしまいたいという悲惨な状態に陥ってしまっての結果です。
一九八〇年に「家族の会」を結成して以来、私たちは介護の苦労を家族どうしの励ましあい助けあいで乗り切ってきました。さいわい「家族の会」の会員の中からはこれまでそのような事件は起こっていませんが、同じ介護者として事件の頻発・増加に心を痛めていました。それは、同じ介護の体験をした者として、殺人にいたる介護者の心情が痛いほどわかるからです。
私自身も認知症になった母を八年間在宅で介護しました。「死んでほしい」と願ったことは二度や三度ではありません。「家族の会」の会員から事件は起こっていないとは言っても、会員の多くもそのような極限に追い込まれた経験をもっているはずです。それなのに、どうして殺人や心中にはいたらなかったのか。死んでしまおう、殺してしまおうと思ったときに思いとどまったのはなぜなのか。そのときの気持ちを、いま死の淵に立っている人に伝えることができれば、一人でも救えるのではないか―そう思ったことが本書をつくる動機でした。
会報『ぽ〜れぽ〜れ』で、自らの体験を踏まえての「死なないで! 殺さないで! 生きようメッセージ」を募りました。一ヵ月の間に八五人の会員が寄せてくれました。首に手をかけた人、崖から突き落とそうと思った人、包丁を手にした人、自動車で激突しようと考えた人、布団で口を押さえた人…。それぞれが思いとどまったわけをつづり、死なないでと呼びかけてくれました。
「家族の会」は、この会員のメッセージを一刻も早くいま苦しんでいる人たちに伝えたいと考え、今年(〇九年)春に、一〇人のメッセージを簡単なリーフレットにして全国四四都道府県にある支部を通じて配布しました。新聞などメディアも大きく紹介してくれたので、ご覧いただいた方もおられるでしょう。
本書は、リーフレットでは紹介しきれなかったメッセージをもっと詳しく知ってもらうものです。いま苦しんでいる方だけでなく、介護に関心をもつすべての方々に一読していただきたい、苦しいけれど死ななかった殺さなかった人たちからの渾身の訴えを受け止めていただきたい。そして、いま追いつめられている人にはどうか生き抜いてほしい、社会の人たちにはどうか介護者を支える輪を広げ強めてほしいと心から願っています。
なお、本書をお読みいただければ、介護者が相手を殺そうとしたときに思いとどまった理由は、人間の尊厳や生命の尊さに思いを馳せてというよりは、意外に簡単なことだと気づかされると思います。「おかあちゃん」という相手の一言であったり笑顔であったり、家族の顔が浮かんだり、たまたま代車であったり、「帰っておいで」という実家の母の言葉であったり…。それは、死の選択しかないと考えている人は、心の底では死んではいけないと思いつつも追いつめられて孤立し、周りが見えなくなっていることの表れではないでしょうか。だから、ふとしたことで目がさめるのではないかと思います。
介護殺人を防ぐためには、まず介護者を孤立させないことが重要でしょう。「家族の会」の会員から事件が起こっていないことも、「家族の会」が介護者の孤立を防ぎ、介護への勇気をわかせることに大きく役立っているからだということは、メッセージからも汲み取っていただけると思います。
しかし、ほんとうに社会から介護殺人をなくすためには、介護者の孤立を防ぐだけでは不十分です。介護殺人の背景には、生活の困窮という問題が横たわっています。介護のための退職や働きに出られないという実態による生活の困窮。さらに、介護を助けるための介護保険が十分に機能していないという実態。介護保険が始まった二〇〇〇年以降に介護殺人が増えていることが証明しています。また、加害者の七割が男性であるという実態は、男性介護者の増加と男性固有の介護の問題を物語っています。
これらのことは、個人の責任でなく、社会が責任をもって解決しなければならない課題です。介護者どうしが交流して介護への勇気をわかせるとともに、社会的な取り組みをすすめてこそ悲しい事件は防げるのだということを、私たちは肝に銘じなければならない、と思っています。
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