障害のある子ども・家族とコミュニティケア
 ―滋賀・父子心中事件を通して考える


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障害のある子ども・家族とコミュニティケア

黒田 学/渡邉 武/日野・障害児家族心中事件調査団 編著
定価 1050円(本体価格 1000円)
ISBN978-4-86342-036-6 C0036

 

●障害者自立支援法の廃止から新たな法・制度への提言
父親と障害のある二人の子どもの無理心中という、きわめて悲惨な事件から、その背景や原因を探り、障害児家族の生活実態調査も踏まえて、法・制度に関わる提言を行う。

 

●もくじ  

発刊にあたって

第1章 日野町・障害児家族の心中事件
     ―その背景と課題を探る

はじめに―調査団結成に至る経緯と調査活動

1 事件発見の経過と家族および支援の状況
 (1)家族の状況
 (2)養護学校の対応と寄宿舎廃止に関わる不安
 (3)日野町の支援と東近江サービス調整会議

2 調査から見えたいくつかの問題と課題
 (1)寄宿舎がなくなる不安―家族が一緒に暮らせない
 (2)経済的な負担―将来が見通せなくなった
 (3)競争社会、格差社会の中での父子家庭と障害児家族
 (4)障害者とその家族の集団的な活動
  ―生き抜いていく力を支え合う
 (5)SOSが届かない―Aさんの絶望的な困苦、
   痛みをつかみ取れなかった
 (6)障害者団体と行政が施策を共有する作業を

第2章 事件によせる想い
     ―各界からのエッセイ

1 障害児の母となって
2 亡くなられた三人の方への私の誓い
3 不条理な制度は違憲であることを訴えて
4 つながりあって希望を
5 思いをあらたに誰もが安心できる社会保障制度の
 確立に向けて
6 すべての障害児学校に、スクール・ソーシャル
 ワーカーを!!
7 まちの思い
8 障害者自立支援法撤廃への展望
9 糸賀一雄氏らが築いた福祉の思想を今どのように発展
 させるのか
10 地域で障害児・者の生活を支える仕組みづくりの
  ために

第3章 格差社会における障害児の子育てと
    コミュニティケア
     ―障害児家族の生活実態調査
      (滋賀・二〇〇七年)を通じて

はじめに―実態調査からみた課題

1 格差社会と障害のある子どもと家族
2 滋賀の障害児と家族の生活
 ―障害児家族の生活実態調査(滋賀、二〇〇七年)
 (1)調査の概要と調査対象の全体的特徴
 (2)子育てによる疲労と不安、放課後の過ごし方
 (3)障害者自立支援法と福祉サービスの利用
 (4)子育ての悩みと社会への要望
   ――自由記述欄に見る切実な声

おわりに―コミュニティケアの展開へ

第4章 障害者と家族をめぐる社会情勢と
    法・制度に関わる提言

1 障害者と家族をめぐる社会情勢とその課題
 (1)社会福祉構造改革、障害者自立支援制度の
  もたらした事態
 (2)学齢期の障害児とその家族に対する福祉的対応
 (3)公的責任の後退と支援の責任は「官から民へ」

2 今後の障害福祉に対する課題と提言
 (1)課題
 (2)提言

3 新たな法・制度を求めて

発刊にあたって

 福祉先進県を自任する滋賀県で、二〇〇六年一二月四日の未明に父親と障害のある二人の子どもの無理心中という極めて悲惨な事件が発生しました。場所は紅葉の名所、湖東三山の古刹「西明寺」近くの駐車場でした。死因は車に持ち込んだ練炭による一酸化中毒によるものでした。
 事件を報じた新聞記事によると、車中に残されていた遺書には「生活が苦しい」「娘の将来が不安だ」などの悲観の言葉が綴られていたとのことです。さらに、二年後の県立養護学校寄宿舎の廃舎と「障害者自立支援法」の実施による福祉サービス利用料の負担増が、この事件の背後にあると指摘しました。まさに自公政権が進める構造改革路線の犠牲者と言っても過言ではありません。
 私たちは二度とこのような悲惨な事件を発生させないために、何が問題なのかを事実に基づいて究明し、改めてわが国の社会保障や障害者福祉のあり方を問い詰めて、その内容を県民・国民に発信すると同時に、憲法二五条に基づく国と行政の公的責任を追及し続けることを決意して「日野・障害児家族心中事件調査団」を結成しました。
 調査団は第一次調査……事実関係の確認および課題の分析、第二次調査……障害児家族がかかえる生活実態調査および課題分析などの活動を実施してきました。
 調査対象の諸機関ならびに関係者などのご協力と、調査団に結集されたみなさんのご努力により、調査団活動の「まとめ」ができましたので、このたび本書として発行する運びとなりました。ぜひご購読いただき、ご批評、ご意見をお寄せください。
 本書の構成は以下のとおりです。第1章が、本心中事件についての調査結果と事件の背景と課題をまとめたものです。第2章は、本事件によせる想いを各界のみなさんからエッセイをいただきました。第3章は、障害児家族の生活実態調査をつうじて滋賀県下の学齢障害児とその家族のおかれている実態を把握しつつ課題を探っています。最後の第4章は、それらを踏まえ、障害者と家族をめぐる社会情勢を考慮しながら、障害者福祉が取り組むべき課題を提言しています。
 なお、本書のタイトルを『障害のある子ども・家族とコミュニティケア』と名付けたのは、障害児とその家族がおかれている現実に対して、生存権保障という公共性の強化とともに、地域社会における共同関係、人間的交流という共同性を強め、自立と社会参加を実現していこうという想いを込めています。地域社会のなかで孤独・ひとりぼっちとなり、その日暮らしの生活を強いられ、希望を失ってしまうことがないように、共同の輪を広げ、支え合える運動を前進させたいという想いです。
 この間に滋賀県では、二〇〇八年八月に福祉施設内で利用者の焼身自殺、二〇〇九年には障害児父子の琵琶湖への入水心中事件や甲賀山中での障害者焼死自殺などが発生しています。
 一九八八年に『「福祉」が人を殺すとき』という、福祉切り捨ての実態を告発する本が発行されて大反響を呼びました。その後も自公政権は「障害者自立支援法」や「後期高齢者医療制度」などを関係者の猛反対を押し切って制定し、「政治が人を殺す」政治を進めてきました。
 このたびの総選挙により、新自由主義思想に基づく「成果主義」「競争主義」「自己責任」などによる社会保障切り捨て政策を推し進めてきた自公政権が退場し、民主党・社民党・国民新党三党連立内閣がスタートしました。天下の悪法「障害者自立支援法」は、私たちの粘り強い運動が実り「廃止」されることになりました。
 これを機に、障害のある人やその家族の心中や自殺の根絶を願い、人の苦しみや痛みを我がこととして受けとめ、広範な県民・国民との連帯をひろげて、二一世紀の早い時期に「平和・人権・発達保障」の花開く社会を実現するために、「共感・共有・共同」の志を基にして、私たちの運動を大きく強く前進させていきましょう。

二〇〇九年一〇月

日野・障害児家族心中事件調査団代表 渡邉 武
(社会福祉を拡充させる滋賀県民の会代表)

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