見方が変われば願いが見える
 ―保育・障害者作業所の実践を拓く


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見方が変われば願いが見える

赤木和重/社会福祉法人コスモス 編著
定価 2310円(本体価格 2200円)
ISBN978-4-86342-035-9 C0036

 

●楽しく福祉の仕事をしたい人に贈る!
日々の実践の中で、目の前の問題やケースに目を奪われがちになるが、仲間や子どもたちの願いを出発点に、その願いに気づき、理解するための実践的・理論的視点を明らかにする。

 

●もくじ  

第1部  実践編
第1章 はたらく
part1 働くことは豊かに生きること
     障害の重い仲間や一般就労をめざす仲間の姿に学ぶ

 人が「働く」意味とは?
 1 障害の重い人にとっての労働
 2 就労支援の実践を通じて
 「労働」とは「豊かに生きること」

コメント●働くことの意味を広く、深くつかまえよう
コラム1●安心できる地域生活をめざして
      ―生活支援センターがありますよ!

part2 安心・安全な実践をめざして 事故の教訓から学ぶ

 作業所での重大事故から学んだ貴重な教訓を
 みんなで共有するために

コメント●安全な実践をめざすことは、
     豊かな実践をつくること

第2章 くらす
part1 食を通して「心」を豊かに
     保育園・作業所における「食」の実践

 福祉の食
 保育園の食支援 アレルギー食についての実践
 作業所での食支援 敦さんを通して考える給食、食支援
 保育園・作業所に共通する「食」の実践の意義

コメント●食は心身を豊かにする ただし、施設内に
     給食職員がいてこそ実現される

part2 「暮らすこと」と「夢と希望」障害のある人の
    願いをつなぐ

 作業所で大切にしてきた「〜したい」力
 1 「おれはここでずっとおりたいな」
 2 障害が重くても生まれ育った地域で暮らしたい
 どんな障害があっても地域で暮らすということ

コラム2●弘之さんのホームでの生活について・直撃
     インタビュー
コメント●豊かな内面は、豊かな生活から生まれる

第3章 つながる
part1 仲間どうしのつながりから新たな力をひきだす
     仲間の集団づくり

 地元との交流が広がる
 一人ひとりを大切にするために
 しごと 縫製班が育む他者との関係
 願いや思いを実現するための自治会活動
 人は人の中でこそ輝く

コメント●仲間どうしのつながりは、「想定外」の
     力を引き出す
コラム3●とうぶ作業所自治会をつくる会仲間の座談会

part2 長く楽しく働ける職場をめざして 職員の集団づくり

 1 法人理念を学び、実践する職員育成
 2 保育園における職員の集団づくり
 3 作業所での職員集団づくり

コメント●「しんどさ」を出しあえるとき、マイナスは
     きっとプラスになる
コラム4●みんなでつくろう! 安心生活のわっ!

第4章 あゆむ
part1 生き抜く力に励まされて 重症心身障害の
    仲間が輝くとき

 障害の重い人の働く場、日中活動の場として
 日中活動を豊かにするために……
  「その人らしさを守りたい」
 重症心身障害の方にとって「働く」とは?
 これからめざすところ

コメント●配慮のあるあたりまえの生活が、重い障害の
     ある仲間の命を輝かせる
コラム5●いつでも誰でもどんなときでも安心して利用
     できるショートステイをめざして

part2 ろう重複障害の仲間への支援 聞こえる仲間とともに

 ろう重複の仲間の支援で大事にしてきたこと
 独自のサインによるあきこさんへの
  コミュニケーション支援
 聞こえる人の中で就職にチャレンジするえりさん
 職員の専門性と共通の支援

コメント●違いを意識しつつ、一緒につながる
     健聴の仲間とろう重複の仲間が共にいる実践
コラム6●親子の自立に向けて

第5章 はぐくむ
part1 気になる子どもと家庭への支援

 子どもたちの豊かな発達をめざして
 発信し伝え続けていくことを大切に
  ひろとくんへの実践から
 保育園の役割とは

コメント●「気になる子ども」の保護者とのつな
     がりが、保育をきりひらく

part2 
子どもと親の生活を支える保育園

 子どもを真ん中に、保護者と保育士が手を
  つなぐ保育園
 子どもにとっての延長保育で大事にしたこと、
  していきたいこと
 送迎が困難な家庭への支援
 地域ルームの開設
 子どもと親にかみ合った保育を

コメント●親と共に揺れながら、親の力をひきだす
コラム7●子どもと母と家族のために
      ―延長保育にも手作り食事

第2部  総論
見方が変われば願いが見える 実践をすすめる基本的視点

 1 私とコスモスとの出会い 196
 2 実践の出発点:「解決」ではなく「理解」から出発する
 3 子どもを理解する具体的な視点
 4 実践の展開: 二つの層を意識しながら実践をすすめる
 5 豊かな実践を想像する源としての職員集団
 6 よい実践は制度を変えていく原動力になる

第3部  座談会
コスモスの歩みとこれからの夢 地域に根ざして
トータルに支える

 1 障害児の親になって・障害児を育てて
 2 行くところがない・居場所づくりから始まった
  無認可共同作業所づくり運動
 3 コスモスに向けて動き出す
 4 これからのコスモスに期待すること

●老人デーサービスセンター 結いの里

資料 地域に根ざした事業と住みよい街づくりをめざして
   理念を実践に

はじめに

社会福祉法人コスモスは、大阪府堺市の中で「ポストの数ほど保育所を」「一人ぼっちの障害者をつくらない」という地域のねがいや要求をもとに、それぞれ共同保育所や共同作業所を母体に市民運動の中から生まれてきた四つの障害者作業所と二つの保育園が合併して一九九六年に誕生した法人です(コスモスの事業の全体像は一二ページを参照)。
そのコスモスで、ずっと作業所の利用者たち(「共に働く仲間」という思いを込めて、障害のある人のことを、私たちは「仲間」と表現してきました。本書の中でも利用者という言葉は使わず「仲間」と呼ばせてもらっています)や、保育園の子どもたちへの発達相談で関わってきてくださった、三重大学の赤木和重先生と一緒に、一年以上をかけて、各作業所や保育園の実践を振り返り、集団論議を重ねる中で、何とか本書をまとめるところまでたどり着きました。

本書は3部構成となっています。
第1部(実践編)は、コスモスの各作業所や保育園でのさまざまな実践の様子を、「はたらく」「くらす」「つながる」「あゆむ」「はぐくむ」という五つの章にまとめています。各章にはより実践のポイントが深められるように、発達心理が専門である赤木先生のコメントが添えられています。
第2部(総論)では、第1部の報告全体をふまえて、赤木先生が実践の中で仲間や子どものねがいに気づき理解するために、忘れてはならない基本的な視点をわかりやすく提示されています。
第3部は、これまでのコスモスの歩みに関わってきた家族や職員、関係者による座談会です。堺市という一地域の活動ではありますが、その歴史の節目での情景やその時々の葛藤や思い、これからめざしていこうとしている展望や夢は、全国各地で障害者や保育の運動に取り組んでいる多くの人たちにも共感できるものではないかと思います。
その他、各部、各章には、家族や障害当事者をはじめ、ケアホームやヘルパー、ショートステイなど、さまざまな職種の職員の視点で書かれたコラムもたくさん載せられています。どうぞ興味のある部分から読み始めてください。なお、実践に登場する仲間の名前はすべて仮名です。また、掲載写真は、本文とは直接に関係のないイメージ写真です。

本書の内容についての良し悪しは読者にまかせるほかありませんが、本づくりがスタートする際に担当者全員で確認したことがあります。
それは「今の社会や情勢の中ではあんまり大事にされていないかもしれないけど、やっぱり、これからも大事にすべきだと思うことを書いてみよう!」ということでした。実際、本づくりの作業を通して、改めて気づいたことがいくつかありました。
一つは、「私たちがめざしてきたのは、仲間や子どもたちのねがいに気づき、寄り添うことだった」ということです。日々の実践の中では、やはり職員は目の前の問題やケースに目を奪われがちになります。時には制度の矛盾や作業所の限界にぶつかり、どうしたらよいかわからなくなることも少なくありません。
しかし、その中で、その限界を乗り越えていくのは、仲間や子どもたちのねがいでした。もともと地域のねがいから生まれてきた作業所や保育園ですから、あたりまえといえばあたりまえですが、今の法人の職員の大半は無認可や措置の時代を知らない世代です。法人が行う事業も障害や保育、高齢と多岐にわたっています。しかし、どの事業のどの事例を紐解いても、仲間や子どもたちのねがいが出発点であったという気づきは新鮮なものでした。
また、その一人ひとりのねがいが初めから明確にあるのではなく、多くの場合それは潜在的なものであり、時には問題行動と思われるような形で表現されていることも共通していました。さらに、それは個人の中から、あるいはマンツーマンの対応から自然発生的に生まれることはあまりなく、そこには集団の営みが大きくかかわっていることも改めて実感されたのでした。たくさんのかかわりや葛藤の中で生まれた、仲間や子どもたちのねがいに触れた時、支援者である私たち職員は、逆に励まされ、支えられていると感じることがあります。あるいは、仲間や子どもたちが変わったように感じる時には、実は職員の方が変わっていたりする。そうした実践での逆転現象のようなものも多くの事例で共通して見られました。

もう一つあります。これまでの実践の歩みを振り返ると、個々のケースにしても法人の事業にしても、その時々では、常に乗り越え難いような問題や矛盾にぶちあたっていたのだという、これまたあたりまえの事実です。しかし、そこでは一人ひとりのねがいに寄り添いながら、粘り強く取り組み、時にはそのねがいを多くの人と共有していく中で、少しずつ乗り越え実現していくという長い時間をかけた実践がありました。「じっくりと長いスパンで取り組んでいくことも大切なのだ」「長い時間をかけることでしか得られないものもあるのだ」。この時間軸についての気づきは、私たちがこれからも福祉の現場で実践をしていく上でとても重要な視点であると感じています。
障害者自立支援法では、個別支援やニーズに応えるサービスが重視されているようです。そのすべてを否定するわけではありませんが、「やっぱり、これからも大事にすべきだ」と私たちが考えるものとは、どこか異なるように感じます。そうした違和感のようなものが各章の事例を通して、少しでもお伝えできることを願っています。

コスモスの実践を本にする話をお伺いしたときは、正直、驚きと共に、果たして本にまとめるような実践を自分たちはしてきたのだろうか……自信のなさがまず先にありました。長期にわたる編集会議で、赤木和重先生の的確で納得のいく助言と、クリエイツかもがわの田島英二さんの根気強い励ましがあって本ができあがりました。ここに感謝いたします。
この本の中で取り上げている事例は、決して明日の実践にすぐ役に立つノウハウではないかもしれません。それでも、普段なかなか言葉では言い表せない実践の醍醐味のようなものを、多くの人に少しでも共感してもらえればうれしく思います。

二〇〇九年九月一五日

編集委員会を代表して 林 陽二郎

 

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