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はじめに
1 高機能の広汎性発達障害を理解するために
高機能の広汎性発達障害(HF‐PDD)とは
アスペルガー障害の身体の特性
音/視覚/におい/味覚/暑い・寒い、
熱い・冷たい/痛み/感覚過敏など/
得意・不得意
サポートのスタート
2 面談ファイル20
―高機能の広汎性発達障害の事例と考察・提案
ファイル1 話し方がていねいすぎる小学六年生
ファイル2 子どもが自分のケガに気づいていない
ファイル3 五目並べの世界一になりたい
ファイル4 「ご飯よ」と呼んでも食卓に来ません
ファイル5 おかずを一品ずつたいらげる食べ方をします
ファイル6 クーラーはカビくさいから使いません
ファイル7 冬でも半袖、短パンで、靴下をはきません
ファイル8 不登校の理由は「詰襟」だった
ファイル9 台所で洗い物をしていたら湯呑みが飛んできた
ファイル10 電車好きの息子が……
ファイル11 お風呂に入っている時間が非常に長い
ファイル12 ひょっとしたら知らないかも……―理解しそこないの思い込み
ファイル13 家族旅行から突然一人で帰ってしまった
ファイル14 それはそれ、これはこれ(自分は自分、人は人)
ファイル15 できるだけ人と接しない仕事につきたい
ファイル16 独立して自営業を始めたが、苦手なことは努力してもやっぱり苦手
ファイル17 「めんどくさい」の真意は……
ファイル18 診断を受けて性格のせいではないと証明したい
ファイル19 こんなに笑ったのは生まれて初めてです
ファイル20 夫が書いた家の設計図にはトイレがありません
3 NPO法人ノンラベルの支援・援助の流れと今後の課題
1「不登校、ひきこもり」から高機能の広汎性発達障害へ
出発は不登校、ひきこもり状態の方への支援・援助
発達障害の視点で見ると
2NPO法人ノンラベルの支援・援助活動の経緯とその理念
手本がないなかで続けた試行錯誤
医療と生活支援の役割分担
特性の理解が最大のカギ
3NPO法人ノンラベルの今後の課題
ノンラベルの援助の流れ
就労支援
チームサポート(協力と役割分担)
●資料
アスペルガー障害 チェックリスト
「ノンラベル」の支援・援助・活動
居場所利用目的とその理由
あとがき
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はじめに
全国各都道府県と政令市に「発達障害者支援センター」を設置すること、学校現場には特別支援教育を実施することなど、法的には発達障害児・者の方々への支援がすすもうとしています。
「発達障害者支援センター」が各都道府県、政令市にこれほど早くに設置されたのはなぜか。それは、発達障害者の人口比が想像を超える多さだからです。
不登校の人たちは減少することなく存在し、ひきこもりと言われる人たちも減 っていません。二〇代、三〇代で就労していない人は二〇〇万人とも三〇〇万人とも言われています。
何もなければ人は社会に参入します。
一人のときが一番快適と思う人はいくらでもいますが、働かなければお金は稼げず生活が成り立ちません。ですから仕事をしながらも、それ以外では一人の時間を過ごすという生活をしている方も多いと思います。
しかし、就労しないといけないとわかっていても、就職活動をどうすればよいのかわからない、面接には行くものの、自分の興味関心のあることを延々と話してしまったり、面接官と視線が合わせられなかったり、見当ハズレの答えをしてしまい、何社受けてもすべて不採用……。その果てに「何をどうすればよいのかわからず途方に暮れ、『快適な一人』を過ごしていたら五年、一〇年が経ってしまった」という方々が存在します。
NPO法人ノンラベルは、このような「アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害など、成人の高機能の広汎性発達障害のご本人とご家族をサポート」しています。相談には近畿圏のみならず、関東圏、四国・中国地方、九州など遠方からもお越しになります。本人さんが京都の知人宅に滞在しているからと、親御さんが香港から相談に来られたこともありました。
現在、成人の高機能の広汎性発達障害の方を支援するところは希少です。成人の発達障害を診断する精神科医も希少です。しかし、高機能の広汎性発達障害のある人は想像を絶する人数です。診断はされたが障害をなくす薬はなく、どうすればいいかと悩む家族や当事者さんがあふれかえっています。
生活のしづらさがある彼らとその家族に何かできることはないのか、悶々としながら日々を過ごしている方をそのままにしておいていいのか―。ノンラベルの活動はここから始まっています。
障害の特性のためにできないことを、なにがなんでもできるようにがんばるのは不毛なことで、エネルギーの無駄使いです。少し苦手だったり、経験・体験がないためにできないことは、トレーニングでできるようになります。
そのトレーニングの場を提供し、特性を学んで生活の仕方を工夫し、少しでも生きやすくなるよう支援するのが、ノンラベルの活動の目的です。
複数の人と集うことができる、そのことで疲れ果てない、雑談ができる、場の空気を読む、人を気づかう、ゲームを楽しみ、冗談に笑いあう……。最初は笑顔もなく、小さな声で必要最低限の返事だけだった方が、「居場所」で同じことを不得手とする方々と集い、声を上げて楽しげに笑う姿を見るとき、私は心から「よかった!」と思います。
ノンラベルの玄関から一歩外に出ると険しい顔つきになっていた方も、通所を継続するうちに外でも穏やかな表情になり、家でもイライラすることが減り、家族と穏やかに談笑するようになります。年単位のトレーニングになりますが、一人でがんばるのではなく、多くの人のサポートを受けながら確実に成長、変化していく、うれしい経験の日々です。
こうして、発達に偏りがあってもその人がその人らしく生き生きと生活できるよう、微力ながらサポートを続けています。
「人類すべてに発達の偏りがある」というのは、大げさではなく当たり前のことです。発達に偏りのない「完全定型者」など、一人も存在しないはずです。
ですから、発達に偏りがある、発達障害と診断・判断されても、驚く必要はありません。たとえば、できることとできないことの差が大きいなど発達の偏りが大きいと発達障害と診断がおりますが、それによって、自分にどんな障害の特性があるかを自覚する、そして障害の特性を学ぶことで自分を知ることになり、生活のしづらさを軽減することができます。
私はこれまで、高機能の広汎性発達障害の人の家族からのべ三〇〇〇件を超える相談を受け、多数の当事者さんとお会いしてきました。その数は、おそらく日本国内で一番多いと思います。
その活動のなかで教えられた高機能の広汎性発達障害について、多くの方に理解していただきたく、できるだけわかりやすく解説しようとするのが本書です。
一人でも理解者が増えれば、彼らが生きやすくなると信じて―。
なお、本書で紹介している事例は特定のケースではなく、よくあるケースを典型事例として編集したものです。
また本文中で「HF‐PDDさん」「アスペルガーさん」などと呼称していますが、これらは講演などで特に本人さんたちに好評だったものです。本書の中でも親しみを込めて使用しています。
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