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はしがき
第 I 部●ボランティア研究の今日性
第1章 ボランティア・チャレンジドケースとは何か
第2章 ボランティア観の今日性
―ボランティアの揺らぎとジレンマに着目して
第3章 ボランティア活動の性格と機能
―個人・集団・社会との関連で
第II部●ボランティア・チャレンジドケースの研究
第4章 チャレンジドケースの発生現場
―ボランティア相談場面をフィールドにして
第5章 ボランティアコーディネーターが
「やる気」になるとき
―新しい専門家像の入口に立って
第6章 ボランティアの臨床社会学の可能性
―新たな分析視角の構築にむけて
第III部●ボランティア研究の展開
第7章 コミュニティワーカーとしての
ボランティアコーディネーター
―業務遂行上の困難性について―考察
第8章 ボランティア・コミュニティ
―地域福祉臨床の視点
第IV部●ケースブック
終章 あいまいさに潜む「未来」
―チャレンジケースとサクセスケース
1 「ボランティア・チャレンジドケース」
(106ケース)
2 「ボランティア・サクセスケース」(58ケース)
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は/し/が/き
本書は、筆者らがここ数年間にわたって取り組んできたボランティアに関する研究プロジェクトでの研究成果を基にしている。「ボランティアとは何か」ということを正面に掲げたものではなく、むしろ以下に記すような実践志向にこそ強い動機があった。ボランティア活動とその周辺領域において、今どのようなことが要請され、どのようなことが解決を要する問題となっているのだろうか。あるいはボランティア活動を「する側/される側」、ボランティアを支援「する側/される側」、ボランティアを「送る側/受け入れる側」という、いわば非対称を特徴とするこの関係性はどのような課題を抱えているのであろうか。共にその解決に向けた共同行動が可能であるとすればどのようなフレームが要請されているのであろうか。
いくつかのインタビューやアンケート調査を続けていくうちに、ボランティア活動の相談場面という「場」において、社会問題とリンクしながら、ボランティアとボランティア利用者、その支援者が織り成す相互関係のダイナミズムにこそ、上記の私たちの問題関心への解が潜んでいるのではないかと思うに至った。結果的に、変数要素が幾重にも張り巡らされた複雑な活動総体として「ボランティアとは何か」を常に意識せざるを得なかった。本書執筆メンバーで明示的に確認してきたわけではないが、少なくとも筆者自身はこのような思いを込めてこの研究に従事してきた。
ボランティア活動の相談場面で発生する困難事例を、新たな社会システム形成への「チャレンジド」と意味化したこの研究は、当初、立命館大学人間科学研究所の学術フロンティア推進事業のサブプロジェクト「ライフデザインプロジェクト」(2000年度−2004年度)で取り組んできた研究課題である。そのプロジェクトでは、京都市社会福祉協議会・キリン福祉財団の関係者と共に共同研究プロジェクト(ボランティア・スキル・マッチング・エージェンシー・プロジェクト)を組織しながら、ボランティアの知恵が生きる社会システムとその動力としてのボランティアセンターやボランティアコーディネーターについて研究を深めてきた。
地域において発生するさまざまな生活問題状況に対応した実践活動として、現実に展開されている人々の意志的な相互支援活動(=ボランティア活動)について、活動当事者と共にその現場に足を運び、課題を共有しながら、分析検討を加えつつ、新たな「知」を開拓していくという臨床的研究方法論をもって取り組んできた。そしてボランティアの価値や知識、技術が絶え間なく更新し循環する新しい社会システムと、それを推進していく「エンジン」について提案していくというこの共同研究から、ボランティアチャレンジドケースの臨床研究というアイデアは生まれた。
このプロジェクトは、教育的には大学ボランティアセンターの設置(2004年4月)につながり、研究面では日本学術振興会科学研究費補助金「ボランティアコーディネーションにおけるチャレンジドケース臨床研究」(基盤研究B、課題番号16330110、2004−2006年度)に深化した。またこれらの取り組みが、「地域活性化ボランティア教育の深化と発展」事業として文部科学省現代的教育ニーズ取組支援プログラムに採択(2005−2008年度)されている。いずれもが、ボランティア活動に関わっての実践と研究を推進していく「エンジン」である。
ボランティア活動に付きまとうあいまいさや揺らぎ、ジレンマという実際の実践活動や研究場面では、なんとも扱いづらくややもすれば現状清算的な研究になりかねないテーマを、新たな秩序形成に向かう社会の軋みや胎動と捉え直そうとしたところに私たちの研究の難しさとおもしろさがあった。そして、その難しさとおもしろさを潜り抜けることができれば、その先には私たちの希望ある「未来」が見えてくるのではないか、というおぼろげな予感もあった。その意味で私たちの研究自体も「チャレンジド」である。
当初の研究分担・協力者は、斎藤真緒(立命館大学産業社会学部准教授)、桜井政成(立命館大学政策科学部准教授)の本書執筆者以外にも、西田心平(北九州市立大学准教授)、南多恵子(神戸夙川学院大学講師)、日紫喜あゆみ(大阪府職員)らが参加した。
立命館大学のボランティアセンター設置後に組織したボランティアサービスラーニング(VSL)研究会には、山田一隆(龍谷大学経済学部サービスラーニングセンター助手)、角谷嘉則(立命館大学嘱託講師)、中根智子(同)、松瀬房子(立命館大学ボランティアセンター主事)、井上泰夫(同)、小林政夫(同)も参加してきた。本書は彼らとの共同研究の一端である。
大学でのケーススタディにも使えるような「ケースブック」を編集してみたいという当初の狙いにはほど遠いが、本書巻末にはチャレンジドケースのケースブックも収め、いくつかの特徴的なチャレンジドケースを掲載している。
本書の刊行は、立命館大学ボランティアセンターの特別のサポートがなければ実現しなかった。財団法人キリン福祉財団には、長きにわたって、私たちの調査研究やボランティアコーディネーター養成プログラムなど、教育活動を支援していただいた。また、本書の出版を引き受けていただいたクリエイツかもがわの田島英二、岡田温実両氏にもまたずいぶんとお世話になった。最後になったが、心からの感謝の意を記して、発刊の辞としたい。
2009年4月30日
執筆者を代表して 津止正敏
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