手づくりの国際理解教育
 ―ベトナム障害児スタディーツアー


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手づくりの国際理解教育

藤本文朗、藤井克美、黒田 学、向井啓二 編著
定価 2100円(本体価格 2000円)
ISBN978-4-86342-006-9 C0036

●日本ベトナム友好障害児教育・福祉セミナーをベトナムで開催。その16年間のあゆみから、アジア・ベトナムの障害者問題の理解、日本とベトナムの友好と異文化理解、国際協力、国際平和の活動を通じて培ってきた国際理解教育としての成果を明らかにする。

●もくじ  

はじめに
序 章 ベトさんドクさんとの出会いから
   ―継続を力に国際理解教育の発展を
 はじめに
 1 ベトちゃんドクちゃんとの出会いと背景
 2 日本ベトナム友好障害児教育・福祉セミナーの歩み
 おわりに―今後の展望

第1部 ベトさんドクさんと私たち

第1章 「ベトちゃんドクちゃん」と出会ったことの意味
 1 はじまり
 2 なにゆえに
 3 ドクさんベトさんの今
 4 心に残ることば
 5 語りつぐ大切なこと
第2章 ベトちゃん ドクちゃんだけでなく
    ―ホーチミン市でのセミナー10年の総括
 1 私の日越交流の21年を振り返り
 2 私たち日本側がベトナムに訴えたかったことは何か
 3 われわれがベトナム側から学んだ宝は
第3章 ホーチミン市から首都ハノイへ
    ―ハノイでの5年間の総括、学生セミナーの
     始まりと今後
 1 ホーチミン市から、ハノイ師範大学へ
 2 研究・実践交流のさらなる深まり
 3 学生交流の拡がり
 4 サービス・ラーニングの試み
 5 セミナーと国際理解教育
 6 再び、ホーチミン市へ

第2部 ベトナム・障害者・国際理解教育 81

第4章 ベトナム・スタディツアーと国際理解教育
    ―スタディツアーの準備・実施
 1 スタディーツアーの広がり
 2 1年間をかけての準備
 3 実施にあたって
 4 ベトナム側の準備について
 5 学びとは人との出会いと交流
第5章 セミナーを通じて学びあった私たち
    ―エッセイ・セミナーで学びあい、
     つながりあった私たち

プロローグ―「セミナーを通じて学びあった私たち」によせて/(1)学生から社会人へ、5年間を通して/(2)参加から参画、そして変革へ/(3)セミナーを通しての私の成長/(4)私にとってのベトナム仏教――もう一つのベトナム体験/(5)もっともっとベトナム!/(6)ベトナム障害児教育・福祉スタディツアーに参加して/(7)ベトナムの聴覚障害者(ろう者)との交流を通して感じたこと/(8)共に学びあう国際交流の第一歩―ベトナムで学んだこと/(9)ベトナムスタディツアーを通じて学びあった私たち/(10)セミナーで学び、現地でさらに調査活動、国際NGO活動と広げて/(11)アジアの純真/(12)セミナーに感謝!!/(13)添乗員として参加して

第6章 ベトナムからのメッセージ

(1)毎年8月にホーチミン市で開催してきたセミナーを通じて感じたこと6/(2)ハノイでの日本ベトナム友好障害児教育・福祉セミナー、5年間の成果/(3)ベトナムと日本の平和友好のかけ橋/(3)学習環境は、どこにもある

 

第3部 国際理解教育の課題と展望―今なぜ国際理解か?

第7章 開発教育・国際福祉の視点からセミナーをとらえる
    ―今なぜ国際理解か?
 1 今なぜ「開発教育・国際福祉の視点」なのか
   ―3つの核の危機からあらたな平和福祉社会の
    パラダイムを求めて
 2 平和研究・教育と福祉問題との接点について
 3 ユニバーサルヒューマンライツとまちづくり
 4 今後の課題と展望
第8章 アジアの障害者問題と国際理解教育
 1 障害者の権利保障とアジア太平洋地域の課題
 2 障害者の権利保障実現に向けたアジア太平洋
   地域の連帯
 3 障害者の発達保障と国際的連帯、国際理解教育

資料 日本ベトナム友好障害児・福祉セミナーのあゆみ

21世紀のアジアに生きる障害をもつ子どもたちの希望
 ―あとがきにかえて


はじめに

 本書は、1992年以来、日本ベトナム友好障害児教育・福祉セミナー(以下、セミナー)をベトナムにおいて開催し、障害児教育・福祉分野の研究、実践、交流に取り組んできた16年間の歩みを振り返り、アジア・ベトナムの障害者問題への理解、日本とベトナムとの友好と異文化理解、国際協力、国際平和の活動を通じて培ってきた国際理解教育としての成果を報告するものである。
 日本とベトナムとの学校教師、福祉関係者、大学研究者、大学院生、学生の自主的な参加と、対等・平等な相互交流(異文化交流、異世代間交流)を通じて、日本とベトナムの障害児教育と福祉の未来をともに考えあってきた。すべての障害者の「完全参加と平等」(国際障害者年テーマ)が達成されることを願い、また、戦争が障害者問題の最大発生要因であるという認識に立って、平和な国際社会構築に向けて行動し、草の根レベルでの友好と相互交流、協力関係を深めてきた。
 セミナーは、ベトちゃんドクちゃんの発達を願う会を出発点にして、ベトちゃんドクちゃんだけでない、ベトナムの障害のあるすべての子どもたちが人間らしく成長発達していくことを願って、1992年、ホーチミン市での第1回開催以来、毎年開催されてきた。ベトナムの障害児教育福祉全体へと対象を広げ、同分野の研究、実践、交流を行ってきた。
 セミナーは、@対等・平等・友好の原則(ベトナム側参加者との実践・研究交流、相互理解)、Aベトナム側への援助(セミナー開催費用、参加者支援費用など)を基本に活動してきた。セミナーは、これまで一貫して、ベトナムの皆さんと「対等・平等・友好の原則」に基づいて運営しており、運営費については、主に日本側参加者の参加費でまかなわれてきた。またセミナーは、非営利であり、自主的な組織として、NGOとしての性格をもって活動している。
 第1回から第10回(1992年〜2001年)は、ホーチミン市障害児教育研究センターなどをカウンターパートに開催し、第11回から第15回(2002年〜2006年)は、開催地をハノイに移し、ハノイ師範大学障害児教育学部とともに開催してきた。第16回(2007年)からは、再び開催地をホーチミン市に移し、ホーチミン市師範大学障害児教育学部をカウンターパートにしている。
 セミナーの詳しい内容は、本文を参照していただきたいが、日本における障害児教育、福祉分野の研究と実践、その経験を伝えること、と同時に、ベトナムの障害児の実態と課題について、ともに考えあい、学びあってきた。障害児教育、福祉分野の先進国・日本のNGOが、途上国ベトナムに研究や実践を一方的に移転するのではなく、「対等・平等・友好」の原則のもと、ベトナムの実態や障害児教育・福祉分野の関係者から多くのことを逆に学ばせてもらった。それらの活動の成果は、ベトちゃんドクちゃんの発達を願う会・藤本文朗編『ベトちゃんドクちゃんだけでなく〜日越11年間の国際交流レポート』(1997年)、および、研究紀要として、日本ベトナム友好障害児教育・福祉セミナー実行委員会編『日本ベトナム障害児教育・福祉研究』(第1号〜第5号、2003年〜2007年)などにまとめてきた。
 さらに、セミナーから派生して、ベトナムで大学レベルの障害児教育教員養成特別コースを実施するなど、障害児教育・福祉分野の専門家養成への支援活動も並行して行っている。
また、セミナーに参加する研究者、教育および社会福祉の関係者、大学院生らを中心にベトナム社会福祉研究会を組織し、障害児教育・福祉分野の研究、障害児者の生活実態調査を通じて、ベトナムの障害者問題と教育福祉施策の展開過程とその課題を研究し、その成果として『胎動するベトナムの教育と福祉―ドイモイ政策下の障害者と家族の実態』(2003年)を上梓した。
 したがって本書は、『ベトちゃんドクちゃんだけでなく』(1997年)、『胎動するベトナムの教育と福祉』(2003年)の続編と位置づけることができる。『ベトちゃんドクちゃんだけでなく』の刊行以来、約10年の歳月は、ベトナムの経済社会の急速な変化とともに、障害児教育・福祉分野の大きな変化、展開を見せている。
 セミナーの取り組みを国際動向と関連させて考えてみると、第1に、セミナーの主題である障害児教育・福祉に関わっては、障害者の権利保障の展開が重要である。
 2006年12月、障害者と関係者の長年にわたる努力の成果として、国際連合第61回総会において障害者権利条約が採択された。国際障害者年(1981年)、障害者に関する世界行動計画(1982年)、それに続く国連障害者の十年(1983〜1992年)などを受けて、障害者の権利保障に向けて、批准各国の責務が明確になってきた。とりわけ発展途上国の障害者の生活状況の改善に向けて国際協力が重要であることもまた強調されている。アジア太平洋地域においては、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)によるアジア太平洋障害者の十年(1993-2002年)、第2次アジア太平洋障害者の十年(2003-2012年)が進められており、アジア太平洋地域の障害者のための、「インクルーシブで、バリアフリーな、かつ権利に基づく社会」の形成がめざされている。
 また、国際動向との関連は、第2に、ユネスコや国連における国際教育、平和の文化に関する取り組みの展開が重要である。
 今から三十数年前、ユネスコにおいて、「国際教育」勧告(「国際理解、国際協力、および国際平和のための教育と、人権と基本的自由についての教育に関する勧告」)(1974年)が採択され、さらにユネスコ「平和・人権・民主主義教育に関する総合的行動要綱」(1995年)、国連「平和の文化に関する宣言」(1999年)、「平和の文化国際年:International Year for Culture of Peace」(2000年)、「世界の子どもたちに平和と非暴力の文化をつくる国際十年」(2001-2010年)などに引き継がれてきた。ユネスコ「国際教育」勧告は、「国際的に取り組むべき現代世界の人類史的な諸課題を包括的かつ構造的に表現する積極的な意義」(深山正光『国際教育の研究』新協出版、2007年)をもつものであり、その後の「平和の文化」創造の基調をなすものとなっている。
 セミナーと国際動向との関連としては、第3に、環境問題があげられる。それは、ベトナム戦争時に米軍によって散布された枯葉剤被害であり、「ベトさん・ドクさん」に代表される被害者の発生、環境破壊と障害の発生に関する問題である。ホーチミン市ツーズー病院院長のフォン博士は、かつて来日した際に、枯葉剤被害の問題はダイオキシンによるものであり、それはベトナム固有の問題であるだけでなく、先進国の問題になるであろうと指摘した。確かに、ゴミ焼却灰に含まれたダイオキシンによる環境汚染がゴミ焼却場周辺で指摘されたことは記憶に新しい。
 以上のように、本書は国際的動向、アジア太平洋地域の動向を踏まえながら、ベトナムにおける障害児教育福祉分野のセミナー開催を通じて、ベトナムの障害者問題と国際理解教育として取り組んできた活動の成果を整理するものである。

黒田 学

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