| はじめに
第1部●高機能広汎性発達障害とは
1 文科省の高機能自閉症の判断基準試案
(1)社会的関係形成の困難さ (2)言葉の発達の遅れ
(3)こだわりの強さ(想像力の障害)
2 その他の特徴
(1)感覚過敏(または感覚の鈍麻)
(2)「心の理論」の獲得の困難さ
(3)実行機能(執行機能)の障害
(4)全体知覚の困難さ
(5)タイムスリップ現象(フラッシュバック)
(6)他者と共有されにくい独特の言い回しや感情表現
(7)二分法的思考と独自の論理や推論
3 高機能広汎性発達障害のタイプ
(1)受動群 (2)積極・奇異群
4 発達障害に対する不適切な対応によって生じる問題行動
(1)他者に対するいじめや暴力
(2)被害的認知とフラッシュバック
(3)自尊感情の低下 (4)不登校・家庭内暴力
(5)うつ病などの精神疾患
第2部●実践編・発達障害といじめ・暴力
第1章 桃子との波乱の日々
―桃子の苦しみと生きづらさ
村中哲之助(北海道・小学校)
1 始業式・転入生桃子との出会い
2 クラスの様子
3 クラスの遊び
4 いじめメモ事件
5 桃子の荒れと生い立ち
6 桃子をめぐるクラス・学校
7 ますます激しくなる桃子のパニック
8 遠足・運動会
9 荒れに対する取り組みの方向性
10 桃子の苦しみ
11 医大での担当医との相談
12 二学期
13 防犯ベル騒動
14 学校=荒れのスイッチ
15 冬休み
16 その後の経緯
パニックでしか表出できない生きづらさへの共感的理解を
―村中実践を読みひらく
1 桃子の問題をどう理解するのか?
(1)桃子の抱えている発達障害は何か
(2)全体知覚の困難さ (3)実行機能の障害
(4)聴覚過敏とパニック
(5)桃子の担任への「激しい甘え」をどう理解するのか
2 母親との共同の困難さ
―母親の要求と桃子のニーズは本当に
合致していたのだろうか?
(1)母親自身の問題をどう理解するのか
(2)母親との連携の困難さ
3 学校現場、教師はいったい何ができたのだろうか?
(1)母親に周囲がコントロールされることがもたらす問題
(2)桃子自身が「わたし」を育むための援助を
第2章 ふぶきのあした―ワタリの自立へのあゆみ
堀 逸郎(大分県・小学校)
1 開かずの扉
2 巣ごもり
3 スタートライン
4 冷戦
5 揺れ
6 対話の成立
7 ワタリのこだわり
8 デビュー
9 お湯割り
10 自分たちの力で
11 卒業式の手紙
12 その後の経緯
発達障害の子どもとのコミュニケーションの通路の創造
―堀実践を読みひらく
1 ワタリの抱えていた “ 困り感”を理解する
2 ヨイチとワタリとの関係
3 母親の苦悩
4 ワタリの変化は何によってもたらされたのだろうか?
(1)ワタリの対人的な距離感を尊重したかかわり
(2)明示的でわかりやすい指導の枠組み
(3)ワタリのクラス活動への参加の通路をひらく
5 ワタリの自立の課題
第3章 「キレる」子どもたちとの出会い
猪俣 修(埼玉・中学校)
はじめに
1 自分を捨ててしまう純一にどう向き合ったか
(1)純一との出会い (2)母親との話し合い
(3)繰り返されるいじめ
(4)ケンカが引き金となって別室登校に
(5)あいつらぶっ殺してやる!
2 コリッキーの学級での居場所づくり
(1)小学校からの情報 (2)当初の指導方針
(3)入学後の様子 (4)義男に対する暴力
(5)コリッキーの活躍 (6)次々と起こるトラブル
(7)少しずつ「居場所」ができてきた
(8)コリッキーが初めて叱られなかった三者面談
(9)それでも事件は起こる
(10)二学期以降の学校生活
(11)発達課題を受けとめ、肯定的な自分に
出会えるように
「パワーゲーム」を乗り越えて、相互尊重の関係を築く
―猪俣実践を読みひらく
1 純一の問題をどう捉えるのか?
2 純一に対する猪俣先生の指導
(1)子どもに独自の論理をまずは受容していくこと
(2)パワーゲームの土俵を外したところで
コミュニケーションの通路をひらく
3 コリッキーの問題をどう捉えるのか?
4 コリッキーに対する猪俣先生の指導
(1)肯定的な評価に出会える活動の機会の保障
(2)「再現ビデオ」「○○事件物語」の取り組み
(3)班長会を中心としたコリッキーの問題の
読みひらきと居場所づくり
5 肯定的な評価を保護者に返していくことの意義
第4章 クラスの仲間とともに成長していく浩一
―「戦うために生きてきた」浩一が仲間と出会った
上田 華(兵庫・中学校)
1 たいへんな子どもが入学してくる!
2 浩一についての入学前の情報
(1)特別支援の先生から (2)お母さんの話から
3 私たちの方針
4 一年生 みんなといっしょに日常生活を!
(1)入学当初から目立った浩一と義男
(2)二人がクラスに受け入れられた転地学習
(3)浩一の起こすさまざまなトラブル
5 数々のトラブルから見えてきたもの、そして
浩一の要求をみんなに
(1)授業中のトラブル
(2)浩一の要求をクラスのみんなに伝える
(3)学級集団への信頼が浩一を変えた?
(4)オレって自閉症?
6 二年生、仲間としてつながる
7 ある日、突然、事件は起こる。浩一の心の中は?
(1)生徒会長への嫌がらせ、ストーカー行為
(2)「アンネ・フランクに似た恵子をしばく!」
(3)先生たちはぐるになって、浩一が嘘をついて
いると言うんですか!
8 苦手な子たちがいるからこそ優勝を!
(体育大会の取り組み)
(1)運動が大の苦手な子どもたち
(2)体育大会の目標 (3)学年種目ムカデ
(4)意地になって勝負をかけた体育大会
9 それでも問題は続く……
(1)「新たなターゲットができた 武装準備は着々と
整っている」
(2)「虫けらを殺した英雄?」
(3)人間は戦うために生まれてきたんだ
(4)運動場で自慰行為 (5)私の心配
10 浩一の初めての友だち
(1)「浩一くん、それはよくありませんよ」と
言ってくれる友だち雄太
(2)仲間の中で他者との信頼感とつながりを
獲得していく浩一
11 お母さんといっしょに特別支援教育センターへ、
そして将来に向けて
自己肯定感と他者への信頼感を育む「子ども集団づくり」
―上田実践を読みひらく
1 浩一の抱えていた問題をどう理解するのか?
2 保護者との信頼関係づくりのプロセス
3 浩一と仲間集団との出会いのもつ意味
(1)浩一の “view” を共感的に理解していくことで、
安全感と仲間への信頼感を培う
(2)彼の論理ではなく、その背後にある「ヘルプの
訴え」を受けとめる
(3)学校行事で他者と共同することを学ぶ
(4)対等にかかわれる仲間とのつながり
第3部●高機能広汎性発達障害の子どもに対する
教育実践の留意点
はじめに
(1)自己肯定感を育むこと
(2)広汎性発達障害の子どもたちの三つの
発達保障の課題
1 個別指導の課題
(1)その子どもの “view” と生きづらさへの
共感的応答を
(2)その子どもの距離感と興味・関心を尊重した
コミュニケーション
(3)その子どもに独自の論理や推論を受けとめた
上での相互的な対話
(4)困ったときに適切なかたちで他者にヘルプを
出せる援助を
(5)自分の気持ちや感情と折り合いっていく
プロセスへの援助
(6)子どもの発達特性を踏まえた指導の工夫
(7)子どもの思いを受けとめた上でのソーシャル
スキル学習を
(8)「自己形成モデル」との出会いの機会の保障
2 集団指導(「子ども集団づくり」)の課題 199
(1)すべての子どもの思いが大切にされる
「子ども集団づくり」
(2)その子どもの “view” を、他の子どもたちと
いっしょに読みひらいていくこと
(3)集団内のトラブルのていねいな読みひらきを
(4)本人なりのセルフコントロールの方法、立ち直り
の方法を子ども集団が承認、援助していくこと
(5)その子どもの “view” に応答し、擁護したり、
サポートしてくれる子どもを育てること
(6)対等にかかわり、ぶつかれる仲間関係の創造
(7)子どものこだわりが「個性」として生かされる
ような社会参加の通路の創造
(8)「違い」の背後にある「同じ」の発見と発達的
共感関係の創造
3 保護者との共同の課題
(1) 保護者の抱える苦悩や生きづらさへの共感的理解を
(2)発達障害をもつ保護者に対する理解と対応
あとがき
監修のことば
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「現代の教育課題と集団づくり」シリーズ・監修のことば
大和久 勝
今回の出版企画について、クリエイツかもがわの田島さんと話し合いを始めたのは二〇〇七年の一月でした。田島さんとは、すでに『困った子は 困っている子』(二〇〇六年)の出版でお世話になっていましたから、その続編をというような考えから話し合いがスタートしましたが、やがて『現代の教育課題と集団づくり』をテーマとして検討を始めました。課題が絞られ、「発達障害」「いじめ・暴力」「家族問題」の三部作でいこうということになりました。そして、二〇〇七年の春から夏前後にかけて数回にわたり、編著者となっていただける湯浅恭正さん、楠凡之さん、山田綾さんの方々との打ち合わせを進めてきました。その中で、本のテーマ、実践執筆者の検討、執筆打診などをしました。
湯浅さんには、「発達障害と集団づくり」をテーマとしていただき、楠さんには「いじめ・暴力」をテーマとしていただくようにお願いしました。両者は関連しあうところもあるのですが、湯浅さんのところでは、特別支援教育の問題、障害児教育の今までとこれからにもかかわらせながら、発達障害をどうとらえていくか、集団づくりをどうすすめるか、学校づくりをどうすすめるかなどにも論及していっていただくことにしました。楠さんのところでは、いじめ・暴力の背景にある親の問題や発達障害の問題にもかかわらせて論及してもらえるようにしました。二次障害に追いつめられている「高機能広範性発達障害」の子どもたちに焦点を当て、暴力の解明と指導の方策を提示してもらおうということになりました。
山田さんにお願いしたテーマは「家族問題(現代家族)と集団づくり」です。これも、今まで長く研究の対象にあったものですが、一冊の本としてまとめられる機会はありませんでした。今回、過去に共同して研究をされてきた三人の実践家の協力を得て、山田さんのこれまでの研究をまとめていただくことにしました。
これらの本が、今回、三部作としてまとめて発表される意義は大きいと思います。研究者でもない私ですが、その橋渡しをさせていただいたことを、光栄に思っています。明確な課題を「集団づくり」でつなげているところにシリーズの値打ちがあります。
三つの本は、小中学校の教職員にとどまらず、さまざまな教育関係者、保護者、地域の人たち、学生など、幅広く対象にして書いていただいています。教育・保育の現場はもとより、教育問題に関心を寄せられている保護者や地域の方々にも読んでいただければ幸いです。なお、この「現代の教育課題と集団づくり」シリーズは、喫緊なテーマを取り上げる続刊を検討しています。ご期待ください。
二〇〇八年七月一日
〈監修者略歴〉
大和久 勝(おおわく・まさる)
1945年東京生まれ。1968年早稲田大学教育学部卒業。2005年3月まで東京都小学校教諭。現在大学講師、全国生活指導研究協議会常任委員会代表。主な著書に『「ADHD」の子どもと生きる教室」(新日本出版社)、『共感力―「共感」が育てる子どもの「自立」』(同)、編著書に「困った子は困っている子」(クリエイツかもがわ)。
〈編著者略歴〉
楠 凡之(くすのき・ひろゆき)
…第1部、第2部実践分析、第3部
1960年大阪生まれ。1989年京都大学教育学研究科博士課程満期退学。1992年北九州市立大学文学部に専任講師として赴任。1994年より北九州市立大学文学部人間関係学科助教授、2002年より同教授。現在、全国生活指導研究協議会指名全国委員、北九州子育て支援と子ども文化ネットワーク代表、日本生活指導学会理事。
専門 臨床教育学(子どもの人格発達と教育指導)、家庭援助論
著書 『いじめと児童虐待の臨床教育学』(ミネルヴァ書房、2002年)、『平和を創る心理学』(ナカニシヤ出版・共著、2001年)、『気になる子ども 気になる保護者』(かもがわ出版、2005年)、『「気になる保護者」とつながる援助』(同、2008年)
〈第2部実践執筆者〉
村中哲之助(なかむら・てつのすけ)
堀 逸郎(ほり・いつろう)
猪俣 修(いのまた・おさむ)
上田 華(うえだ・はな)
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