| はじめに
第1部●特別支援教育と発達障害
1 特別支援教育の枠組みを問う
(1)教育実践はサービスではない
(2)「つながり」と特別支援教育
2 発達障害児のニーズとは何か
(1)発達と障害
(2)「揺らぎを聞き取られたい」というニーズ
(3)生活への参加
3 学校づくりと特別支援教育
(1)子ども理解の多数派に
(2)特別支援教育と「場」づくり
(3)プロセスゴール
第2部●実践編・困っている子に寄り添う集団づくり
第1章 大地とみんなをどうつなぐか
―攻撃・排除からつながりへ
里中広美(北海道・小学校)
1 大地への攻撃
2 大地を知る
3 両親との話し合い―病院を受診
4 大地に合わせる
5 大地とつながる
「つながり」を軸にした個人指導と集団指導の追求
―里中実践を読みひらく
1 排除しない学級づくり
(1)教師が先頭に立つ
(2)多層の子どもとの共同
2 集団づくりの視点
(1)代弁によってつなぐ
(2)活動の見通しと活躍の事実を示す
(3)関係を紡ぎ出す媒介
3 保護者の生活・教師の生活
(1)生活を選びとる
(2)学級づくりの方針で共同する
第2章 ユウスケの願いに寄り添う
―納得と合意、つながりを紡ぐ
猪野善弘(大分・特別支援学級)
1 プロローグ ユウスケ登場
2 ユウスケとの糸を紡ぐ
(1)行動を受け入れ見守る
(2)友達とのかかわり方を教える
(3)よいことと悪いことをはっきりと伝える
3 糸をさらに紡ぐ―約束づくり・思いをかなえる
(1)受け入れて乗り越える
(2)カウントダウンとイエローカード、そしてポイント制へ (3)二回目の運動会とユウスケ
4 子どもたちとユウスケとの糸を紡ぐ
(1)ユウスケと子どもたちのパイプ
(2)ジャンケン事件
(3)音楽の授業と音楽集会
(4)キラキラはユウスケ
(5)タッチでなかよし大作戦
5 エピローグ みんなで物語を紡ぐ
―なかよしプロジェクト
特別支援学級教師の役割と共同―猪野実践を読みひらく
1 受容と要求の論理
(1)受容・要求とは何か
(2)「受容と要求」の姿勢を指導方針化する
(3)納得と合意をつくる
2 差異の世界と共同の世界
(1)思いに寄り添い、橋渡しする技
(2)共同の中で要求を認める
(3)特別支援学級の子どものリーダー
3 特別支援学級と通常学級をつなぐ
(1)教師相互の連携を問う
(2)交流・共同教育の展望
第3章 中学生の自立と向きあう
―久志とけい子 井原美香子(東京・中学校)
はじめに
1 久志も一緒に歌おう
(1)久志という子
(2)体育大会
(3)パニック
(4)早退
(5)合唱コンクール
(6)班替え
(7)久志も一緒に歌おう
(8)その後
2 安心の教室をつくりたい
(1)補助教員
(2)けい子という子
(3)けい子とみんな
(4)これから
発達障害児の自立と生活づくり―井原実践を読みひらく
1 生活づくりと集団づくり
(1)行事を軸に切り込む
(2)「困った」存在を公的な問題として
2 特別な支援と学校のリズム・システム
(1)活動への負担と不安
(2)生活への異議申し立てとケア
3 学校づくりと保護者の生活
(1)散歩のある生活
(2)親との共同をつくる契機
第4章 海人の未来を拓きたい!
―子ども・親との共同 今関和子(東京・小学校)
1 ツトムへの苦い思い……
2 サルのような子どもたち
3 海人との出会い
4 海人の抱えているもの
5 休み時間の後のトラブル処理
6 海人と昇太
7 海人のお使い
8 先生が代わりに謝るから
9 先生と一緒
10 海人の未来が見えない
11 保護者との対話
12 ケアをすることで、変わってきたこと
13 ケアを広げる
14 「泣きながら、うちで勉強しているから……」
15 海人の未来は拓けるのか?
発達障害の子どもの「一歩」と共同―今関実践を読みひらく
1 子どもと出会い、集団に開く
(1)子どもの身体と関係づくり
(2)学級に開く指導
2 差異があることと共同の世界
(1)つながりの輪を見つめる
(2)「一歩」を承認する世界と共同
3 発達障害への支援体制
(1)特別なニーズへの支援と共同
(2)保護者との連携と将来への展望
第3部●発達障害児と集団づくりの展望
はじめに―社会制作という実践原則
1 学校生活の質を問い返す
(1)生活の共有と「間」
(2)生活における場とその選択
2 子ども集団づくりと発達障害
(1)「いい学級」に囚われない
(2)多様な生き方と出会い直す
(3)集団づくりの実践的切り口
3 学校の授業と集団づくり
(1)学習への参加と発達障害
(2)学びのストーリーをつくりだす
あとがき
監修のことば
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あとがき
特別支援教育もスタートしてから、まだほんの一年に過ぎません。発達障害の研究も、アスペルガー障害は長いとはいえ、およそ六〇年ほどしか積み重ねられてはいません。発達障害の子どものニーズをより深く把握するためには、障害研究のいっそうの発展が期待されます。しかし、本書に掲載した実践記録を何度も読み返してみると、「はじめに」で述べた、特別支援教育の新たなステージに踏み出すための示唆をいくつも発見することができるように思います。
そこには、発達障害児の世界を理解し、読みとるだけではなく、自分でも気づかずに困っている子どもがいること、そうしてまた困っている子どもがいることさえ気づかないで進んでいく、学校生活の日常を問い返していく教師の姿勢を学ぶことができます。こうした実践の姿勢は、実践を綴り、その記録をもとにして仲間の中で検討されることによって育まれるものです。
四つの実践記録が本書を手にされた多くの方によってさらに読みひらかれて、いくら優れた力量をもっていても、けっして個人の力では太刀打ちすることのできない特別支援教育を展開するための方向を明らかにしていただければと願います。
私の所属している大阪の生活指導研究会の会員通信(二〇〇八年六月)に、小学校教師・清水裕紀子さんが「二〇歳の同窓会」とする、以下のような短信を寄せています。教え子との久しぶりの同窓会をもとに、集団づくりの実践とは何かを述べています。そこからは、集団づくりと特別支援教育へのヒントがよく伝わってきます。
育ちも今の生活も、まったくちがう彼らがつながって一つの企画を成功させる。……いろいろなカラーの子どもたちが一緒に生活している学校。カラーが違うからこそ、それをうまく出し合えば大きな力にしていける。社会を動かす力も学校の集団づくりも、それによく似た関係かもしれません。
清水さんは学級で発達障害のある子ども、重い発達的課題をもつ子どもに寄り添う実践を創造的に進めてきています。そこにはこの短信にある、多様な差異を承認しつつ、子どもたちの参加と共同に拓かれるインクルージョンの実践思想が基盤にあるように思います。
学校時代にこうした体験をもち、それが二〇歳になってもつながる世界=地域生活を耕し、つくり出しているのだと思います。特別支援教育が、ともどもに社会を制作し・地域生活をつくる営みとして展開する、そのための可能性と課題は何かを探るために、本書が広く活用されることを願います。
2008年6月23日
湯浅恭正
〈監修者略歴〉
大和久 勝(おおわく・まさる)
1945年東京生まれ。1968年早稲田大学教育学部卒業。2005年3月まで東京都小学校教諭。現在大学講師、全国生活指導研究協議会常任委員会代表。主な著書に『「ADHD」の子どもと生きる教室」(新日本出版社)、『共感力―「共感」が育てる子どもの「自立」』(同)、編著書に「困った子は困っている子」(クリエイツかもがわ)。
〈編著者略歴〉
湯浅 恭正(ゆあさ・たかまさ)
…第1部、第2部実践分析、第3部
1951年島根県生まれ。1979年広島大学大学院教育学研究科博士課程退学。徳島文理大学家政学部、香川大学教育学部を経て、2005年より大阪市立大学大学院文学研究科・文学部教育学教室教授。日本教育方法学会理事、全国生活指導研究協議会指名全国委員。
専門 教育方法学 特別ニーズ教育論
著書 『障害児の教授学入門』(コレール社、共編著、2002)、『障害児授業実践の教授学的研究』(大学教育出版、2006)、『特別支援教育キャリアアップシリーズ』(全3巻)(黎明書房、共編著、2007−2008)、『よくわかる特別支援教育』(ミネルヴァ書房、編著、2008)
〈第2部実践執筆者〉
里中 広美(さとなか・ひろみ)
猪野 善弘(いの・よしひろ)
井原 美香子(いはら・みかこ)
今関 和子(いまぜき・かずこ)
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