当事者が語る異文化としてのアスペルガー
 自閉症スペクトラム 青年期・成人期のサクセスガイド2


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当事者が語る異文化としてのアスペルガー

服巻智子 編著
定価 2100円(本体価格 2000円)
ISBN978-4-86342-000-7 C0037

●当事者の経験に当事者が学ぶ !!

●オーディズム・リトリート・ジャパン――支援者も学べる自閉症者のための当事者大会
 成人期当事者の経験や実体から具体的支援のかたちを探る

●家族間系、国際結婚、学校生活から、青年期・成人期に戸惑わない、人と状況に応じた支援のヒントがいっぱい。

●もくじ  

第1章 アスペルガーとわたしの過去・現在・未来
 ――対人関係障害への接し方・導き方のポイント
   リアン・ホリデー・ウィリー
 ●相手の表情を読み取る
 ●マットと毛布は違うもの
 ●毎日が同じであってほしい
 ●正直はいけないこと!?
 ●社会が決める、ハマって良いこと悪いこと!?
 ●一生懸命生きている
 ●刺激に満ちた世界の中で
 ●大きな動物が好きな理由
 ●自分の不器用さに圧倒される
 ●「きまり」のもつ意味
 ●物語の違った意味
 ●私たちの言うことは本当に間違っているの?
 ●私は私
 ●アスペルガー症候群についてわかっていること
 ●感覚の特異性
 ●なんでも信じてしまうアスペルガー
 ●マーク・トウェインの気持ち
 ●父のしてくれた支援
 ●母のこと
 ●私の夫
 ●薬のこと
 ●子どもが生まれて
 ●文化の違いを認めること
 ●アスペルガーを表明して
 ●ブラウン先生のこと
 ●私たちの弱さ
 ●すばらしい専門家との出会い
 ●子どもたちのこと
 ●もっと早くわかりたかったアスペルガーのこと
 ●アスペルガーの人は定型発達の人のことが
  理解できない
 ●アスペルガーの言葉、定型発達の言葉
 ●自分を大切に

第2章 アスペルガー的生き方と国際結婚

1●異文化のなかでのアスペルガー生活
 ――自分を知り、他者に働きかけ、自らも成長
  リチャード・モート
 ●一番好きな言葉
 ●日本人は文化の違う人に寛容
 ●よくある質問―「なぜ日本に来たのですか?」
 ●よくある質問―「日本語、しゃべれますか?」
 ●アスペルガーの三つの視点
 ●日本はアスペルガーにとってパラダイス?
 ●アスペルガーの考え方
 ●私の考え方
 ●アスペルガーのための効果的なストラテジー
2●アスペルガーの夫とともに
 ――よき理解と新たな価値観を提供し合う
   パートナーとして
  香・モート
 ●二人のプロフィール
 ●結婚した理由
 ●結婚生活(1)
 ●結婚生活(2)
 ●私の経験から言えること

第3章 成人期に戸惑わないために
 ――ASDの学校生活、家族を考える
1●変わり者こそステータス・お気楽自閉さん人生
 ――母親とのつきあい方
  榎木たけ子
 ●自己紹介
 ●幼児期
 ●小学校(学校生活)
 ●中学校(学校生活)
 ●中学校(家庭)
 ●高校(学校生活)
 ●大学その(1)(学校生活)
 ●大学その(2)(学校生活)
 ●大学院その(3)
 ●大学院その(4)
 ●大学・大学院(家庭)
 ●親との関係
 ●私のマイブームと母の寛大さ
 ●意外とツボにはまる母の言葉
 ●実家は避難先
 ●お気楽人生のまとめ・その(1)
 ●お気楽人生のまとめ・その(2)
 ●たくさんの人たちに感謝
2●学校が教えてくれなかったこと
 ――スルーできない脳だからこそ、学齢期における
   対人世界のていねいな説明がカギ
  ニキ・リンコ
 ●すべては索引のように
 ●努力しないと気づかないことはいつまでも面白い
 ●ハマりがちな分野、さらっと流せない分野を知っておこう
 ●逆行の想像力が弱いと、手段と目的の区別に気づけない
 ●なんで歓迎会は毎日ないのだろう?
 ●先生にも家族がいる?
 ●先生は全部お手本
 ●牛乳ビンのフタを拾えば勉強ができるようになる?
 ●給食の献立も教科学習?
 ●片手でお盆を持つのは悪い人
 ●知らなかった「お盆を両手で持つ」理由
 ●でもパパの傘、黄色くないじゃん
 ●違うそろばんなのに正しい答えが出るなんて
 ●実はけっこう多い「これでなくてもいいんだけど」
 ●子ども時代の「広く浅く」は「味見」と同じ
 ●練習だからベストを尽くす
 ●学校と社会の「公平」は違う
 ●「知人の紹介による採用」はコストを下げる
 ●いつも同じ人に発注するわけ
 ●遅れてわかったことは刺激的
 ●「知的に誠実な自分」という落とし穴
 ●ほしかった「いまは学校だからだよ」というひと言
 ●学校限定ルールを相対化しにくい脳

●解説 服巻智子


発刊にあたって

▼当事者のための当事者大会
 ――オーティズム・リトリート・ジャパン

  当事者の語りから親や支援者が学ぶことが多いということは、よく知られていることですが、このオーティズム・リトリート・ジャパンは、当事者自身も学ぶことができる会として発展させたいとの目標のもとに、二〇〇六年二月に第一回大会を開催しました。
 第一回オーティズム・リトリート・ジャパンでは、ニキ・リンコさんを基調講演にお迎えし、自閉症スペクトラムをもちながら、人生の各ステージで奮戦されてきたこと、その際のコツなどについて、五人の方々に語っていただきました。
「学校生活を生き伸びるコツ」や「(自分なりの)結婚生活のコツ」「(自分なりの)就職と職場でのコツ」そして「母として妻として」などのテーマで、ニキさんのほか榎木たけ子さん、ロザモンドさん、忍さん、そして空音さんに語っていただきました。そのときの記録は『自閉症スペクトラム 青年期・成人期のサクセスガイド』(クリエイツかもがわ)として世に出ました。
 そもそも、この大会は、文章を書くという才能のある当事者ばかりでなく、書くのは苦手だけれど、話すという形態であれば発言の可能な人たちへの機会を広げることで、自閉症スペクトラム(ASD)の多様な成人期の状況を伝えていくことも目的のひとつとしていました。
 スペクトラムという連続体に存在する人たちは、本当に一面だけではとらえられないということ、また、一人のASDの人を理解したとしても、その特性が他のASDの人も同じというわけではなく、非常に広範な様相を呈するのだということを伝える一助となった大会であり、本にまとめられたことで、さらに理解をひろげることができました。この間、さまざまなかたちで、成人当事者の生活実態やかかえる問題を提起する当事者本もたくさん出版されています。『自閉っ子、自立への道を探る』(花風社)や『こんなサポートがあれば2』(エンパワメント研究所)、そして、当事者たちの自叙伝などです。
 一年後の二〇〇七年三月初めに、第二回を開催しました。
「とにかく集まりましょう!」という気概のもと始まった第一回でしたが、第二回大会には、アメリカ合衆国から『アスペルガー的人生』(邦訳・東京書籍)という、自叙伝の著者であるリアン・ホリデー・ウィリーさんが、講師の一人として来てくださることになりました。またこのときには、日本人講師陣のほかに、東京在住でイギリス国籍のリチャード・モートさんと夫人の香・モートさんにもお話いただくことになり、国際色豊かな大会になりました。本書は、そのときの記録でもあります。

(中略)

▼成人期当事者の実態と具体的支援のかたちを探る

  最初に述べましたように、第二回オーティズム・リトリート・ジャパンは、大変に国際色豊かな会となりました。それなのに会場では、臨場感のなかで共通点をもつ仲間であることを実感できたのは、ASDが同じ脳機能をもつということの証明でもあったかもしれません。そこが、本書のタイトル『当事者が語る異文化としてのアスペルガー』となった理由です。
 第一回の開催とその記録発行のあと、二〇〇七年四月より特別支援教育がすべての学校でいっせいに実施されることになりました。それにより、幼稚園から高校まで特別支援教育システムが導入されました。実質的には`一斉にaとはいかないところが歯がゆい思いをしているわけですが、そのようななかで、自治を認められている大学などでも、ニーズをもつ発達障害の学生に対しての特別支援を提供する、と発表するところが出始めてきています。
 また、青年・成人期の就労支援においても、県庁舎内でエンクレーブ(集中型飛び地職業訓練)形式とシェアドサポート(支援共有型職業訓練タイプ)形式を複合した職業訓練を提供すると発表した佐賀県のように、手帳の取れない発達障害者への支援を積極的に進める地方自治体も出てきました。
 とはいえ、若者サポートステーションに支援を求めている人たちやニート、引きこもりといわれる人たちの半数以上が発達障害をもつと推定されています。診断の必要があるのに未診断のままの方たちもとても多いので、まだまだどのような支援内容が必要なのか、成人期の生活実態のすべてについてわかっているとはいえません。このような現状では、日本は必要な支援のすべてについて提供の準備ができているともいえないのです。
 オーティズム・リトリート・ジャパンでは、これからも、わかっていない成人期の生活実態や、うまくやっていくためにはどのような理解と努力、具体的支援のかたちが求められるのか、本人にできることと周囲の人たちにできることの両面から、探っていきたいと考えています。

   二〇〇八年五月

NPO法人 それいゆ総合相談センター長  
服巻智子

 

 ■それいゆ相談センター

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